お引き受けするにあたって、下心がまったくなかったとは言い切れないから、源氏の君は紫の上にどうご説明しようかお悩みになる。
上皇様が女三の宮様の婿君探しをしておられることは紫の上もご存じだったけれど、
<まさか源氏の君が婿君におなりになることはないだろう。亡き式部卿の宮様の姫君に求婚していらっしゃったようだけれど、それだって無理にご結婚まではなさらなかったのだから>
と予想していらっしゃる。
これまで紫の上のお立場をおびやかす可能性があった女君は、賀茂神社の斎院をなさっていた朝顔の姫君だけ。
その方とのご結婚の話も結局はなくなってしまったのだから、今回も大丈夫だろうとお思いなのね。
とくに源氏の君にお尋ねにもならず、すっかり信じていらっしゃるので、源氏の君はお心が落ち着かない。
<ご結婚を引き受けてしまったと聞いたら、紫の上はどう思うだろうか。私の紫の上への思いは変わらないし、むしろ気の毒ゆえに愛情は深まるはずだけれど、それがはっきりするまでは心変わりを疑われるだろうな>
お互い中年におなりになった今は、隠し事などなくしっくりとしたご夫婦仲でいらっしゃるから、ひさしぶりにお持ちになった秘密が気になってしまわれる。
その夜は言い出せないままお休みになった。
上皇様が女三の宮様の婿君探しをしておられることは紫の上もご存じだったけれど、
<まさか源氏の君が婿君におなりになることはないだろう。亡き式部卿の宮様の姫君に求婚していらっしゃったようだけれど、それだって無理にご結婚まではなさらなかったのだから>
と予想していらっしゃる。
これまで紫の上のお立場をおびやかす可能性があった女君は、賀茂神社の斎院をなさっていた朝顔の姫君だけ。
その方とのご結婚の話も結局はなくなってしまったのだから、今回も大丈夫だろうとお思いなのね。
とくに源氏の君にお尋ねにもならず、すっかり信じていらっしゃるので、源氏の君はお心が落ち着かない。
<ご結婚を引き受けてしまったと聞いたら、紫の上はどう思うだろうか。私の紫の上への思いは変わらないし、むしろ気の毒ゆえに愛情は深まるはずだけれど、それがはっきりするまでは心変わりを疑われるだろうな>
お互い中年におなりになった今は、隠し事などなくしっくりとしたご夫婦仲でいらっしゃるから、ひさしぶりにお持ちになった秘密が気になってしまわれる。
その夜は言い出せないままお休みになった。



