野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上

ご体調がお悪いのに、ご無理をしてなんとか裳着(もぎ)儀式(ぎしき)を終えられると、その三日後に上皇(じょうこう)様はご出家(しゅっけ)の儀式をなさった。
(ぐし)をおろしてお姿が変わってしまわれるのはとても悲しくて、女御(にょうご)様や更衣(こうい)様たちも動揺(どうよう)なさる。

朧月夜(おぼろづきよ)尚侍(ないしのかみ)様は儀式の間もおそばに(ひか)えて沈んでいらっしゃる。
どうやってもお(なぐさ)めできないほど深刻(しんこく)なご様子なの。
<子どもたちとの別れもつらいが、やはり夫婦の別れはそれ以上だ>
上皇様のお心まで乱れるけれど、お気を強くお持ちになって、どうにかひじ置きにもたれていらっしゃる。
格の高い僧侶(そうりょ)たちが作法どおりに儀式を進めていく。
とても悲しい儀式よ。

心を乱れさせない修行(しゅぎょう)をしている僧侶たちだって泣いてしまうほどだから、姫宮(ひめみや)様たちやお(きさき)様たちもお泣きになる。
お仕えしている人たちも身分にかかわらず泣いている。
<出家の儀式がすんだらすぐに山寺(やまでら)へ移るつもりだったが、これだけ(なげ)かれてはそれもしにくい。何より(おんな)(さん)(みや)が心配だから、もうしばらくこの屋敷にいよう>