中宮様からも姫宮様にお祝いが届いた。
ずっと昔、中宮様がまだ姫宮様と同じくらいのお年だったころ、斎宮として伊勢神宮へ行かれることになった。
内裏でご出発の儀式をなさったとき、当時帝であられた上皇様が新斎宮のお髪に櫛をお挿しになった。
大切にとっておかれたその櫛を、今回姫宮様にお贈りになるの。
「あのとき上皇様に挿していただいた櫛です。ずいぶん古くなってしまいましたが、姫宮様のお幸せを祈って差し上げます」
というお手紙が添えられていた。
中宮様の母君の六条御息所は、元東宮様の未亡人という悲しいご境遇の方だった。
その母君と伊勢へ行かれて、斎宮のお役目を果たして都に戻られると間もなく母君がお亡くなりになってしまったの。
そんなお心細いときに源氏の君のご養女になられて、帝に入内し、中宮にまでおなりになった。
<姫宮様も私の幸運にあやかっていただこう>と櫛を差し上げなさったのでしょうね。
ただ、上皇様はご期待どおりにならなかった淡い恋を思い出される。
新斎宮のお髪に櫛を挿しておあげになったとき、そのお美しさに一目ぼれなさったの。
斎宮が交代して都にお戻りになり、これでやっとご結婚できるとなったとき、養父の源氏の君が選ばれたのは帝だった。
ずっと待ちつづけておられた上皇様ではなく帝に入内なさって、今は中宮でいらっしゃる。
それからもう十年近く経つけれど、上皇様はしみじみとお手紙をご覧になる。
たしかに縁起のよい櫛だから、お心を抑えて、真面目にお返事をお言伝なさった。
「あなたのご幸運に姫宮があやかれますよう、私も祈っております」
ずっと昔、中宮様がまだ姫宮様と同じくらいのお年だったころ、斎宮として伊勢神宮へ行かれることになった。
内裏でご出発の儀式をなさったとき、当時帝であられた上皇様が新斎宮のお髪に櫛をお挿しになった。
大切にとっておかれたその櫛を、今回姫宮様にお贈りになるの。
「あのとき上皇様に挿していただいた櫛です。ずいぶん古くなってしまいましたが、姫宮様のお幸せを祈って差し上げます」
というお手紙が添えられていた。
中宮様の母君の六条御息所は、元東宮様の未亡人という悲しいご境遇の方だった。
その母君と伊勢へ行かれて、斎宮のお役目を果たして都に戻られると間もなく母君がお亡くなりになってしまったの。
そんなお心細いときに源氏の君のご養女になられて、帝に入内し、中宮にまでおなりになった。
<姫宮様も私の幸運にあやかっていただこう>と櫛を差し上げなさったのでしょうね。
ただ、上皇様はご期待どおりにならなかった淡い恋を思い出される。
新斎宮のお髪に櫛を挿しておあげになったとき、そのお美しさに一目ぼれなさったの。
斎宮が交代して都にお戻りになり、これでやっとご結婚できるとなったとき、養父の源氏の君が選ばれたのは帝だった。
ずっと待ちつづけておられた上皇様ではなく帝に入内なさって、今は中宮でいらっしゃる。
それからもう十年近く経つけれど、上皇様はしみじみとお手紙をご覧になる。
たしかに縁起のよい櫛だから、お心を抑えて、真面目にお返事をお言伝なさった。
「あなたのご幸運に姫宮があやかれますよう、私も祈っております」



