野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上

年末が近づいたころ、上皇(じょうこう)様はやはりご体調が思わしくないままなので、(おんな)(さん)(みや)様の裳着(もぎ)のご準備をお急ぎになる。
これまでもこれから先もないような、豪華な裳着の儀式(ぎしき)になった。
会場は上皇様のお住まいで、中国の皇帝(こうてい)のお(きさき)様のお部屋のように華麗(かれい)な飾り付けがされている。

腰結(こしゆい)役という、姫宮(ひめみや)様の()(こし)ひもを結ぶ大切なお役目は、太政(だいじょう)大臣(だいじん)様にご依頼なさった。
姫宮様とはご親戚でもないから遠慮なさったけれど、上皇様の(おお)せに(そむ)く方ではないからお引き受けになった。
上級貴族の方たちはことごとくご参列なさる。
親王様もたくさんいらっしゃって、重々しく立派な雰囲気に包まれている。

上皇様が行われる行事はこれが最後だろうと、(みかど)東宮(とうぐう)様も心苦しく思われて、宝物をたくさんお贈りになる。
源氏(げんじ)(きみ)からもみごとなお祝いが届いた。
参列者へのお土産(みやげ)や、腰結(こしゆい)役の太政大臣様への引き出物などは、源氏の君が手配なさった。