女三の宮様のご将来を上皇様が悩んでいらっしゃることは、源氏の君も人づてに聞いていらっしゃった。
そこへ内々のお使者が来て上皇様のお考えをお伝えしたから、まずはご同情なさる。
「お気の毒なことだ。しかし上皇様がご寿命を気にして姫宮を私にお預けになったとしても、たった三歳違いの私がどれほど後に残って姫宮様をご後見できるだろう。少しでも私の方が長生きすることになれば、どの姫宮様たちも私にとっては姪でいらっしゃるのだからお世話申し上げるつもりでいる。こうしてとくに女三の宮様をご心配なさっていると伺ったからには、他の方よりも念を入れてご後見申し上げようとも思うけれど、人の寿命などどうなるか分からないものだから」
来年には四十歳というご自分のお年をお考えになって、<やはりもっと若い婿君をお探しになった方が>とお思いになる。
「ご後見だけならまだしもご結婚ということになると、私が上皇様につづいて出家したり死んだりするときに、かえってつらい思いをおさせしてしまうのではないだろうか。私としても心残りで心配になってしまう。
いっそ息子の中納言などはどうだろう。まだ年も若くて重々しさはないように思われるかもしれないが、私などより寿命ははるかに長いはずだし、将来は立派な政治家になりそうな人柄だ。姫宮様の婿君にもふさわしいと思うが、ひどく生真面目で、ちょうど長年の恋を実らせたところだから、その点で上皇様は遠慮なさったのだろう」
あくまでご自分のこととはお考えにならないので、お使者は歯がゆい。
上皇様が悩みに悩んだ末にご決断なさったことなのだと、そのご様子をくわしくお話し申し上げる。
源氏の君は困ったように微笑んでおっしゃる。
「深くお愛しの姫宮様でいらっしゃるから、どうにもこうにもご心配なのだろう。それなら帝に差し上げなさったらよい。中宮様や女御様たちがすでにいらっしゃることなど何の問題もない。最後に入内なさった方が一番帝に愛されるということもあるものだ。亡き上皇様の後宮でも、東宮時代に最初に入内なさった皇太后様は相当な勢いでいらっしゃったけれど、ずいぶんあとになって入内なさった亡き入道の宮様の勢いはそれ以上で、結局入道の宮様が中宮におなりになった。
そういえば女三の宮様の亡き母君は、入道の宮様の妹君であられるのだったな。ご姉妹のなかでは入道の宮様の次にお美しいと評判の方だったから、ご両親のどちらに似ても女三の宮様は並のご器量ではいらっしゃらないだろうね」
少しご興味をお持ちになって、それをお使者にも勘付かせるようになさる。
そこへ内々のお使者が来て上皇様のお考えをお伝えしたから、まずはご同情なさる。
「お気の毒なことだ。しかし上皇様がご寿命を気にして姫宮を私にお預けになったとしても、たった三歳違いの私がどれほど後に残って姫宮様をご後見できるだろう。少しでも私の方が長生きすることになれば、どの姫宮様たちも私にとっては姪でいらっしゃるのだからお世話申し上げるつもりでいる。こうしてとくに女三の宮様をご心配なさっていると伺ったからには、他の方よりも念を入れてご後見申し上げようとも思うけれど、人の寿命などどうなるか分からないものだから」
来年には四十歳というご自分のお年をお考えになって、<やはりもっと若い婿君をお探しになった方が>とお思いになる。
「ご後見だけならまだしもご結婚ということになると、私が上皇様につづいて出家したり死んだりするときに、かえってつらい思いをおさせしてしまうのではないだろうか。私としても心残りで心配になってしまう。
いっそ息子の中納言などはどうだろう。まだ年も若くて重々しさはないように思われるかもしれないが、私などより寿命ははるかに長いはずだし、将来は立派な政治家になりそうな人柄だ。姫宮様の婿君にもふさわしいと思うが、ひどく生真面目で、ちょうど長年の恋を実らせたところだから、その点で上皇様は遠慮なさったのだろう」
あくまでご自分のこととはお考えにならないので、お使者は歯がゆい。
上皇様が悩みに悩んだ末にご決断なさったことなのだと、そのご様子をくわしくお話し申し上げる。
源氏の君は困ったように微笑んでおっしゃる。
「深くお愛しの姫宮様でいらっしゃるから、どうにもこうにもご心配なのだろう。それなら帝に差し上げなさったらよい。中宮様や女御様たちがすでにいらっしゃることなど何の問題もない。最後に入内なさった方が一番帝に愛されるということもあるものだ。亡き上皇様の後宮でも、東宮時代に最初に入内なさった皇太后様は相当な勢いでいらっしゃったけれど、ずいぶんあとになって入内なさった亡き入道の宮様の勢いはそれ以上で、結局入道の宮様が中宮におなりになった。
そういえば女三の宮様の亡き母君は、入道の宮様の妹君であられるのだったな。ご姉妹のなかでは入道の宮様の次にお美しいと評判の方だったから、ご両親のどちらに似ても女三の宮様は並のご器量ではいらっしゃらないだろうね」
少しご興味をお持ちになって、それをお使者にも勘付かせるようになさる。



