野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上

上皇(じょうこう)様のお悩みは東宮(とうぐう)様のお耳にも届いた。
妹宮(いもうとみや)のことをご心配なさって、はっきりではないけれどお考えをおっしゃる。
目先(めさき)のことよりも、百年後や千年後のお手本となるようなご結婚になさった方がよろしいでしょう。いくら人柄(ひとがら)に問題がなくても、やはり貴族では内親王(ないしんのう)のご結婚相手にふさわしくありません。ここはやはり、上皇待遇(たいぐう)をお受けになっている源氏(げんじ)(きみ)に、親代わりということでお(ゆず)りなされませ」

上皇様は大きくうなずかれる。
「本当にそのとおりだ。よくおっしゃってくださった」
いよいよご決心なさって、姫宮(ひめみや)様の乳母(めのと)の兄から源氏の君に内々(うちうち)にお伝えなさった。