太政大臣様も、ご長男が姫宮様の婿君になれば名誉なことだと思っていらっしゃる。
＜衛門の督は内親王様でなければ妻にしないと決めて、今まで独身をとおしてきたのだ。女三の宮様をいただきたいとお願いして、もしそのお許しが出たときには、私もどれほど鼻が高いことだろう＞
衛門の督様の母君、つまり太政大臣様のご正妻は朧月夜の尚侍様の姉君でいらっしゃる。
その伝手を使って、丁寧に熱心な申し込みをなさったの。
兵部卿の宮様は、玉葛の尚侍様を大将様に奪われてしまったから、あらためてご正妻を探していらっしゃった。
尚侍様や大将様に知られても恥ずかしくないご縁談をお望みだったから、姫宮様はまさにぴったり。
今度こそ手に入れたいとお思いになっている。
上皇様のお屋敷で事務長をなさっている大納言様は、上皇様が山寺にお移りになったら事務長ではいられない。
そこで女三の宮様のお世話係にしていただいて、できれば婿にもしていただければ、ご自分の将来は安泰だと計算していらっしゃるの。
これはこれで切実な理由なのよね。
こういうお話を噂でお聞きになると、中納言様は＜私にも可能性があるのでは＞とお思いになる。
＜『太政大臣の婿になったことが残念だ』と、上皇様は私に直接おっしゃったのだ。うまくお願い申し上げれば、きっと姫宮の婿君候補に入れていただけるだろう＞
お心がときめくけれど、やっとご結婚なさった雲居の雁のことを思い出される。
女君は今やすっかり安心して中納言様を頼りになさっている。
＜太政大臣様が私たちを引き裂かれたときでさえ、他の女性を妻にしようとは思わなかったのに、今さら浮気をして雲居の雁を悲しませたくない。しかも内親王という尊いご身分の方が相手では、私の思いどおりに振舞うわけにもいかず、どちらの妻にも気を遣って私自身も苦しいだろう＞
堅実な方だから冷静にお考えになって、上皇様にお願いはなさらない。
でも、他の男性が選ばれるのもおもしろくないから、婿君選びの行方を気にしていらっしゃる。
＜衛門の督は内親王様でなければ妻にしないと決めて、今まで独身をとおしてきたのだ。女三の宮様をいただきたいとお願いして、もしそのお許しが出たときには、私もどれほど鼻が高いことだろう＞
衛門の督様の母君、つまり太政大臣様のご正妻は朧月夜の尚侍様の姉君でいらっしゃる。
その伝手を使って、丁寧に熱心な申し込みをなさったの。
兵部卿の宮様は、玉葛の尚侍様を大将様に奪われてしまったから、あらためてご正妻を探していらっしゃった。
尚侍様や大将様に知られても恥ずかしくないご縁談をお望みだったから、姫宮様はまさにぴったり。
今度こそ手に入れたいとお思いになっている。
上皇様のお屋敷で事務長をなさっている大納言様は、上皇様が山寺にお移りになったら事務長ではいられない。
そこで女三の宮様のお世話係にしていただいて、できれば婿にもしていただければ、ご自分の将来は安泰だと計算していらっしゃるの。
これはこれで切実な理由なのよね。
こういうお話を噂でお聞きになると、中納言様は＜私にも可能性があるのでは＞とお思いになる。
＜『太政大臣の婿になったことが残念だ』と、上皇様は私に直接おっしゃったのだ。うまくお願い申し上げれば、きっと姫宮の婿君候補に入れていただけるだろう＞
お心がときめくけれど、やっとご結婚なさった雲居の雁のことを思い出される。
女君は今やすっかり安心して中納言様を頼りになさっている。
＜太政大臣様が私たちを引き裂かれたときでさえ、他の女性を妻にしようとは思わなかったのに、今さら浮気をして雲居の雁を悲しませたくない。しかも内親王という尊いご身分の方が相手では、私の思いどおりに振舞うわけにもいかず、どちらの妻にも気を遣って私自身も苦しいだろう＞
堅実な方だから冷静にお考えになって、上皇様にお願いはなさらない。
でも、他の男性が選ばれるのもおもしろくないから、婿君選びの行方を気にしていらっしゃる。
