月は出たけれど花の色ははっきりとは見えない。
それでも花見酒や音楽会をお楽しみになる。
内大臣様は酔ったふりで若君に絡まれる。
「あなたは今の時代にはもったいないほどの賢人でいらっしゃるのに、年老いた私を粗末になさるからつらい。中国の書物で、『妻の父にも自分の父と同じように孝行せよ』ということをお勉強なさったはずでしょう。それなのに私を苦しめなさるから、私はあなたが恨めしくて、恨めしくて」
姫君とのご結婚を許そうと、泣きながらほのめかされる。
「どうして伯父君を粗末になどいたしましょう。亡き母君や祖母君の代わりと思って、力の限りお仕えするつもりでおりますのに。もし何か失礼がありましたら、それは私が至らないためでございます。けっして伯父君を粗末に思ってのことではありません」
若君は内大臣様が無理やりお勧めになるお酒をさりげなく断りながら、慎重にお返事なさる。
「あなたが真剣に思ってくれているなら、こちらもあなたを頼りにいたしますよ」
ご長男が内大臣様のお考えを察して、藤の花を一房折ると若君におあげになる。
若君は受け取ったけれどどうお返事したものか迷っておられる。
「亡き大宮様が結んでくださった縁だと思って、あなたを婿にいたしましょう。ずいぶん待たされてしまったけれど」
「悲しい春を何度も過ごしてまいりましたが、やっと姫君をお許しくださるのですね」
お心を震わせながらお礼をおっしゃる。
「あなたに会えば妹はますます美しくなりましょう」
ご長男も若君と妹君のご結婚をおよろこびになった。
それでも花見酒や音楽会をお楽しみになる。
内大臣様は酔ったふりで若君に絡まれる。
「あなたは今の時代にはもったいないほどの賢人でいらっしゃるのに、年老いた私を粗末になさるからつらい。中国の書物で、『妻の父にも自分の父と同じように孝行せよ』ということをお勉強なさったはずでしょう。それなのに私を苦しめなさるから、私はあなたが恨めしくて、恨めしくて」
姫君とのご結婚を許そうと、泣きながらほのめかされる。
「どうして伯父君を粗末になどいたしましょう。亡き母君や祖母君の代わりと思って、力の限りお仕えするつもりでおりますのに。もし何か失礼がありましたら、それは私が至らないためでございます。けっして伯父君を粗末に思ってのことではありません」
若君は内大臣様が無理やりお勧めになるお酒をさりげなく断りながら、慎重にお返事なさる。
「あなたが真剣に思ってくれているなら、こちらもあなたを頼りにいたしますよ」
ご長男が内大臣様のお考えを察して、藤の花を一房折ると若君におあげになる。
若君は受け取ったけれどどうお返事したものか迷っておられる。
「亡き大宮様が結んでくださった縁だと思って、あなたを婿にいたしましょう。ずいぶん待たされてしまったけれど」
「悲しい春を何度も過ごしてまいりましたが、やっと姫君をお許しくださるのですね」
お心を震わせながらお礼をおっしゃる。
「あなたに会えば妹はますます美しくなりましょう」
ご長男も若君と妹君のご結婚をおよろこびになった。



