若君はお部屋で念入りに身支度すると、内大臣様がずいぶんやきもきなさったころにご到着なさった。
ご子息たちがお迎えして、内大臣様は若君のお席を整えるよう女房にお命じになる。
大切なお客様として扱われていらっしゃるの。
ご正妻や若い女房たちにおっしゃる。
「少し覗いてごらんなさい。たいそうご立派におなりになったよ。落ち着いたご態度で風格がおありだ。筋が通った尊敬すべき人物という点では、父君の源氏の君よりも優っておられるだろうね。
源氏の君はとにかく周囲から愛される人で、拝見しているだけでも幸せな気分になるような方だけれど、政治を行う貴族としては厳格さが不足しておられることもあった。皇子としてお育ちになった方だから、仕方のないことではあるが。
一方、若君は学問もよくできて、ご性格も男らしい。頼もしい政治家になるだろうと世間でも言われている」
若君にお会いになると、少しだけ真面目なお話をなさったあと、花のお話をなさる。
「春の花はどれも咲きはじめるとほれぼれしますが、こちらのことなどお構いなくあっという間に散ってしまうのが恨めしいものです。そういうころに藤の花はひとり遅れて咲きますから、心憎くてよいものだと感じます。色もまた懐かしくて、亡き大宮様を思い出されませんか」
すっきりしたご表情で微笑まれる内大臣様はたいそうお美しい。
源氏の君への対抗心や、姫君のご結婚への野心を取り払えば、この方はもともと最高に優雅な貴族でいらっしゃる。
ご子息たちがお迎えして、内大臣様は若君のお席を整えるよう女房にお命じになる。
大切なお客様として扱われていらっしゃるの。
ご正妻や若い女房たちにおっしゃる。
「少し覗いてごらんなさい。たいそうご立派におなりになったよ。落ち着いたご態度で風格がおありだ。筋が通った尊敬すべき人物という点では、父君の源氏の君よりも優っておられるだろうね。
源氏の君はとにかく周囲から愛される人で、拝見しているだけでも幸せな気分になるような方だけれど、政治を行う貴族としては厳格さが不足しておられることもあった。皇子としてお育ちになった方だから、仕方のないことではあるが。
一方、若君は学問もよくできて、ご性格も男らしい。頼もしい政治家になるだろうと世間でも言われている」
若君にお会いになると、少しだけ真面目なお話をなさったあと、花のお話をなさる。
「春の花はどれも咲きはじめるとほれぼれしますが、こちらのことなどお構いなくあっという間に散ってしまうのが恨めしいものです。そういうころに藤の花はひとり遅れて咲きますから、心憎くてよいものだと感じます。色もまた懐かしくて、亡き大宮様を思い出されませんか」
すっきりしたご表情で微笑まれる内大臣様はたいそうお美しい。
源氏の君への対抗心や、姫君のご結婚への野心を取り払えば、この方はもともと最高に優雅な貴族でいらっしゃる。



