野いちご源氏物語 三三 藤裏葉(ふじのうらば)

内大臣(ないだいじん)様からのお手紙を源氏(げんじ)(きみ)にお見せなさる。
「何かお考えがあってお招きになったのだろう。あちらから結婚を申し込んでくるなら、大宮(おおみや)様のお顔に(どろ)()ったことも許してやらぬでもない」
内大臣様への()けん()がときどき顔を出すのよね。

「そのようなお話ではないかもしれません。ただお屋敷の(ふじ)が例年よりも美しく咲いたので、音楽会がてら私に自慢しようと思い立たれただけなのかも」
源氏の君は小さくお笑いになっておっしゃる。
「わざわざご子息まで寄越(よこ)されたのだ。早く行ってさしあげなさい」

それでも無事にご結婚にたどりつけるか、父親としてはご心配なの。
「その着物の色は身分に()()っていないな。そなたはもう上級貴族なのだから、それらしい格好で出かけなさい」
ご自分のすばらしいお着物を若君(わかぎみ)におあげになった。