源氏の君はお庭の菊を折らせなさって、太政大臣様にお声をおかけになる。
「覚えていらっしゃいますか。もう二十年も昔、ご一緒に青海波を舞いました。甲に挿した紅葉が風で散って、代わりに菊を挿したのですよ」
太政大臣様ももちろん覚えていらっしゃる。
<あのときは源氏の君と肩を並べているつもりだったが、もうとても敵わないご身分になってしまわれた>
ご自分だって太政大臣という貴族として最高の地位でいらっしゃるけれど、上皇様と同格におなりになった源氏の君は雲の上の人なのよね。
時雨がさっと降りだした。
太政大臣様は、
「恐れ多い思い出でございます。今やあなた様は仰ぎ見る星でいらっしゃいますから」
とお答えなさった。
「覚えていらっしゃいますか。もう二十年も昔、ご一緒に青海波を舞いました。甲に挿した紅葉が風で散って、代わりに菊を挿したのですよ」
太政大臣様ももちろん覚えていらっしゃる。
<あのときは源氏の君と肩を並べているつもりだったが、もうとても敵わないご身分になってしまわれた>
ご自分だって太政大臣という貴族として最高の地位でいらっしゃるけれど、上皇様と同格におなりになった源氏の君は雲の上の人なのよね。
時雨がさっと降りだした。
太政大臣様は、
「恐れ多い思い出でございます。今やあなた様は仰ぎ見る星でいらっしゃいますから」
とお答えなさった。



