野いちご源氏物語 三三 藤裏葉(ふじのうらば)

まだ元服(げんぷく)なさって間もないころ、雲居(くもい)(かり)乳母(めのと)位階(いかい)馬鹿(ばか)にされたことを中納言(ちゅうなごん)様は覚えていらっしゃる。
女君(おんなぎみ)のおそばに控えている乳母を、
六位(ろくい)だった私がまさか中納言になるとは思わなかっただろう。私の幼い心をよくも傷つけてくれたね」
とおからかいになる。
若く美しい婿君(むこぎみ)に恐縮しながら乳母は取りつくろう。
源氏(げんじ)(きみ)のお子でいらっしゃるのですから、ご出世なさらないはずがないと内心では思っておりました。その(せつ)は大変失礼いたしました」