いよいよ明石の姫君が入内なさる日。
内裏にはご正妻が付き添っていかれるのがふつうだけれど、源氏の君は迷っておられる。
<紫の上にずっと付き添わせるのはいかがなものだろう。この機会に生母の明石の君を後見役に加えようか>
紫の上にご相談なさると、すんなりと賛成なさった。
「私もちょうどよい機会と存じます。姫君はまだ十一歳でいらっしゃいますのに、お仕えしているのが若い女房たちばかりで心配しておりました。乳母たちはしっかりしておりますけれど、どうしても目の届かないところはあるでしょうから。私のいない間はご生母が付き添ってくだされば安心です」
お心のうちでは、
<ご生母も再会を待ちかねて嘆いているだろうし、姫君も近ごろは本当の母君を恋しく思われるようだ。私がわざと引き離していると恨まれたら困る>
という計算もおありなのだけれど。
明石の君はとてもよろこんで、夢がすべて叶ったような気がする。
女房の着物なども急いで立派に準備するの。
明石の君の母である尼君は、物の数にも入らない自分の立場が悲しい。
<生母である娘が姫君の後見役になったとしても、尼姿の私まで姫君にお目にかかることはできないだろう。どうにかしてもう一度お会いしたいものだけれど>
その気持ちだけで命を長らえさせている。
内裏にはご正妻が付き添っていかれるのがふつうだけれど、源氏の君は迷っておられる。
<紫の上にずっと付き添わせるのはいかがなものだろう。この機会に生母の明石の君を後見役に加えようか>
紫の上にご相談なさると、すんなりと賛成なさった。
「私もちょうどよい機会と存じます。姫君はまだ十一歳でいらっしゃいますのに、お仕えしているのが若い女房たちばかりで心配しておりました。乳母たちはしっかりしておりますけれど、どうしても目の届かないところはあるでしょうから。私のいない間はご生母が付き添ってくだされば安心です」
お心のうちでは、
<ご生母も再会を待ちかねて嘆いているだろうし、姫君も近ごろは本当の母君を恋しく思われるようだ。私がわざと引き離していると恨まれたら困る>
という計算もおありなのだけれど。
明石の君はとてもよろこんで、夢がすべて叶ったような気がする。
女房の着物なども急いで立派に準備するの。
明石の君の母である尼君は、物の数にも入らない自分の立場が悲しい。
<生母である娘が姫君の後見役になったとしても、尼姿の私まで姫君にお目にかかることはできないだろう。どうにかしてもう一度お会いしたいものだけれど>
その気持ちだけで命を長らえさせている。



