野いちご源氏物語 三三 藤裏葉(ふじのうらば)

その日は六条(ろくじょう)(いん)仏教(ぶっきょう)の行事が行われたけれど、若君(わかぎみ)はそわそわと落ち着かない。
日が暮れるころに美しく身支度(みじたく)をして内大臣(ないだいじん)(てい)へお出かけになる。
若君がひそかにかわいがっておられた若い女房(にょうぼう)などは、(うら)めしく思っているみたい。

長くつらい恋を実らせたおふたりは、水も()らさぬ(なか)(むつ)まじいご夫婦におなりになった。
親しく見れば見るほど美しい婿君(むこぎみ)を、内大臣様は大切にお世話なさる。
<源氏の君に負けたようで(くや)しい気持ちもあるが、この婿(むこ)は姫を一途(いちず)に思ってくれていたのだ>
ありがたくも頼もしくもお思いになる。

姉君(あねぎみ)弘徽殿(こきでん)女御(にょうご)様よりもお幸せそうなので、女御様の母君(ははぎみ)はご不快でいらっしゃる。
おふたりはそんなことも気にならないようなお幸せぶりなのだけれど。
姫君の母君は今は別の貴族と再婚なさっている。
そちらはとてもうれしく思っていらっしゃるみたい。