野いちご源氏物語 三二 梅枝(うめがえ)

明石(あかし)姫君(ひめぎみ)のためには桐壺(きりつぼ)という建物が美しく改修(かいしゅう)された。
桐壺は源氏(げんじ)(きみ)母君(ははぎみ)である亡き桐壺の更衣(こうい)様がお住まいになっていたところで、源氏の君がお若いころにはご自分のお部屋になさっていた。
東宮(とうぐう)様がお暮らしになっている梨壺(なしつぼ)と近いから、()()なさるのに便利よ。

姫君の入内(じゅだい)が延期されたことで東宮様は待ち遠しくお思いだから、四月には入内なさることになった。
一旦(いったん)ご用意なさった家具やお道具を、源氏の君はさらに美しく(みが)かせなさる。
お習字のお手本も()りすぐったものをおそろえになった。
昔の名人のご筆跡(ひっせき)も、そのなかにたくさん残っている。