野いちご源氏物語 三二 梅枝(うめがえ)

それから間もなく東宮(とうぐう)様のご元服(げんぷく)儀式(ぎしき)も行われた。
すでに十四歳であられるから、姫君(ひめぎみ)入内(じゅだい)させたいという方はたくさんいるけれど、どなたも源氏(げんじ)(きみ)に遠慮なさっている。
左大臣(さだいじん)様までがためらっておられると聞いて、源氏の君は明石(あかし)姫君(ひめぎみ)の入内を延期なさった。
(みや)(づか)えとは、すばらしいお(きさき)様がたくさんおられるなかで、ほんのわずかな違いで勝ったり負けたりなさるのがよいのです。それができる立派な姫君たちがお屋敷に閉じこめられてしまうのはつまらない」

明石の姫君のあとに姫君を入内させようと思っていた方たちが、このお話をお聞きになって、まずは左大臣様の三番目の姫君が入内なさった。
麗景殿(れいけいでん)にお部屋をいただかれたわ。