野いちご源氏物語 三二 梅枝(うめがえ)

それから源氏(げんじ)(きみ)は、書き手の身分を問わず平仮名のお手本を集めようと思い立たれた。
達筆(たっぴつ)だと有名な人がいれば、探してお書かせになる。
そのなかから()りすぐったものだけを姫君(ひめぎみ)の本箱にお加えになる。
最高のお手本が集まった宝箱だから、若い貴族たちはぜひ拝見したいと思っていらっしゃる。

入内のときに持たせるお道具として、お習字のお手本だけでなく、絵巻(えまき)もおそろえになる。
須磨(すま)で私が描いたものも(ゆず)りたい>
とお思いになるけれど、姫君はまだ十一歳でいらっしゃるから、もう少し分別(ふんべつ)がついたころに譲ろうとしまっておかれる。