野いちご源氏物語 三二 梅枝（うめがえ）

女君(おんなぎみ)たちがお書きになったものはお見せにならない。
朝顔(あさがお)の姫君(ひめぎみ)から届いたものはとくに厳重(げんじゅう)にお隠しになる。

若君(わかぎみ)がお書きになった、絵として見てもおもしろいお手本をお出しになった。
豊かな水の流れと植物を描いて、そのなかに文字が隠されているの。
水辺の美しい風景の次には、がらりと雰囲気を変えて岩のなかに現代風の文字を隠した絵もある。
「これは細かい。すみずみまで拝見しようと思うと時間がかかりますね」
こういうものが大好きな宮様でいらっしゃるから、興味深くご覧になってはたいそうおほめになる。