「兵部卿の宮様がお越しでございます」
女房がそう申し上げると、源氏の君は驚いてきちんとした格好をなさる。
かしこまってお待ちになっていると、宮様はお庭から御殿へ上がる階段をゆったりとお上がりになった。
美しい弟宮でいらっしゃるから、女房たちは物陰から覗いて見とれている。
ご兄弟といえどもお互いに礼儀正しくご挨拶なさって、それもまた感じがよいの。
「暇で暇で苦しいほどでしたから、よいところにお越しくださいました」
そう歓迎なさると、宮様は頼まれておられたお手本を差し出された。
さっそく広げてご覧になる。
ご筆跡自体は特別にご立派というわけではないけれど、ひたすら麗しいお書きぶりでいらっしゃる。
お選びになった和歌は古くてめずらしいもので、すっきりと書かれていた。
源氏の君は驚かれる。
「これほどお上手とは思っておりませんでした。私などとても書けなくなってしまいます」
「今の名人たちばかりにお声をおかけになったと伺いましたから、私だってそのひとりだと信じて書かせていただきました」
楽しそうにご冗談をおっしゃるの。
ご自分がお書きになったものや、ご依頼先から集まってきたものもお隠しするわけにいかないので、宮様の御前にお出しになる。
源氏の君のご筆跡は自由自在に変えてある。
それぞれの書体が一番輝くように紙や和歌をお選びになっていて、どれも見ごたえがある。
宮様は夢中でご覧になっていた。
女房がそう申し上げると、源氏の君は驚いてきちんとした格好をなさる。
かしこまってお待ちになっていると、宮様はお庭から御殿へ上がる階段をゆったりとお上がりになった。
美しい弟宮でいらっしゃるから、女房たちは物陰から覗いて見とれている。
ご兄弟といえどもお互いに礼儀正しくご挨拶なさって、それもまた感じがよいの。
「暇で暇で苦しいほどでしたから、よいところにお越しくださいました」
そう歓迎なさると、宮様は頼まれておられたお手本を差し出された。
さっそく広げてご覧になる。
ご筆跡自体は特別にご立派というわけではないけれど、ひたすら麗しいお書きぶりでいらっしゃる。
お選びになった和歌は古くてめずらしいもので、すっきりと書かれていた。
源氏の君は驚かれる。
「これほどお上手とは思っておりませんでした。私などとても書けなくなってしまいます」
「今の名人たちばかりにお声をおかけになったと伺いましたから、私だってそのひとりだと信じて書かせていただきました」
楽しそうにご冗談をおっしゃるの。
ご自分がお書きになったものや、ご依頼先から集まってきたものもお隠しするわけにいかないので、宮様の御前にお出しになる。
源氏の君のご筆跡は自由自在に変えてある。
それぞれの書体が一番輝くように紙や和歌をお選びになっていて、どれも見ごたえがある。
宮様は夢中でご覧になっていた。



