野いちご源氏物語 三二 梅枝(うめがえ)

源氏(げんじ)(きみ)はご自分のお部屋でお書きになる。
春はもうすぐ終わろうとしていて、水色の空がうららかに広がっている。
古い和歌をいくつかお選びになると、古めかしい書体や今どきの平仮名などで、さまざまに書いていかれる。
御前(ごぜん)には女房(にょうぼう)を二、三人、和歌を選ぶときの相談相手になるような人だけをお置きになって、(すみ)をすらせていらっしゃる。

(すだれ)は上げてしまって、お庭がよく見えるところでくつろいで書いておられるの。
筆跡(ひっせき)が目立ちやすい紙にお書きになるときは、すっと背筋(せすじ)を伸ばして筆を持ち直して書かれるのも、拝見しているこちらはうっとりしてしまう。