野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)

式部卿(しきぶきょう)(みや)様はこのことをお聞きになって、苦々(にがにが)しそうにおっしゃる。
右大将(うだいしょう)が新しい女性を迎えて大切にしているのなら、その屋敷の片隅(かたすみ)(ちぢ)こまって暮らしつづけるのは人聞きが悪い。私が生きている間は、そのように我慢して夫に従わなくてもよい」
正妻(せいさい)を実家である宮邸(みやてい)に引き取ろうと、お部屋の準備をなさる。
<生まれ育った父宮(ちちみや)のお屋敷ではあるけれど、このような境遇(きょうぐう)になって帰るのも>
父宮にまでご心配をおかけしたことをお悩みになるあまり、ますますご体調が悪くなって寝込んでしまわれる。
もともとのご性格はおとなしく素直で、子どものように無邪気な方なのだけれど、ときどき発作(ほっさ)が起きてとんでもない行動をなさるの。