野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)

十一月になった。
内裏(だいり)で行事の多い月よ。
玉葛(たまかずら)尚侍(ないしのかみ)様は、六条(ろくじょう)(いん)でお仕事をなさっている。
女官(にょかん)たちが内裏からやって来ては行事のことで相談したり指示を(あお)いだりするから、尚侍様のお部屋はにぎやかに活気づいた。
右大将(うだいしょう)様は隠れてそれをご覧になっているの。
鬱陶(うっとう)しい>と尚侍様はお思いになる。

長年堅物(かたぶつ)で通してきた人なのに、そんな気配(けはい)はもう微塵(みじん)も残っていない。
尚侍様のことばかり考えて、せっせと六条の院にお通いになる。
女房(にょうぼう)たちはあまりの変わりようにおかしく思っている。