野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)

右大将(うだいしょう)様は一日も早く姫君(ひめぎみ)をご自分のお屋敷に引き取りたくていらっしゃる。
でも、お屋敷にはご正妻(せいさい)がいらっしゃるの。
姫君のことをよくお思いになるはずがない。
「もう少しおだやかに、どなたからも(うら)みを買わないように動かれた方がよろしいでしょう」
ご正妻がお気の毒だという口実(こうじつ)で、源氏(げんじ)(きみ)は姫君のお引越しに反対なさる。

一方、実父(じっぷ)内大臣(ないだいじん)様は、このご結婚に満足しておられる。
(みや)(づか)えなさるよりも、かえってこの方が正解だろう。たいした後見(こうけん)もなく内裏(だいり)に上がって苦労なさるのはおかわいそうだから。もちろん私もお役に立ちたいとは思っているが、弘徽殿(こきでん)女御(にょうご)様をさしおいてお世話するわけにはいかない」
こっそりとそんなことをおっしゃっていたみたい。
たしかに、いくら(みかど)のご愛情をいただいたとしても、尚侍(ないしのかみ)のご身分ではご立派なお(きさき)様たちに並ぶことはできない。
一番格下のお立場で薄いご愛情をいただくのはおつらいでしょうね。

ご結婚から三日目の夜には源氏の君が盛大な儀式(ぎしき)をなさった。
これで正式に右大将様と姫君はご夫婦になられたの。
内大臣様は人づてに聞いて、そこまで面倒を見てくださった源氏の君に感謝なさった。