その日は日が暮れるとすぐに出発しようとなさる。
昨夜のお着物は、灰だけでなく炭も一緒に浴びせかけられたせいで、焦げて穴が開いている。
下に重ねたお着物まで焦げくさくなってしまったから、すべて脱いでお体をお洗いになった。
それから他のお着物をお召しになるけれど、ご病気のご正妻にお着物の管理や製作のご指示は難しくて、ちょうどよいものがそろっていないの。
不格好になってしまったことに文句をおっしゃっている。
女房がお着物にお香を焚きしめながら申し上げる。
「見捨てられる奥様はお胸が焦げるほどお苦しみでございます。昨夜はその炎がお着物に飛び移ったのでしょうね」
この人は右大将様のお手がついているけれど、ご正妻に同情している。
<どうしてこの程度の女に手をつけたのだろう>
美しい玉葛の尚侍様を手に入れたあとでは、そんなふうにお思いになるのだから情けない方でいらっしゃる。
「後悔することはいくらでもあるが、いずれにせよ、こんなひどい話を源氏の君と式部卿の宮様がお聞きになったら、私はどちらからも締め出されてしまうだろうよ」
ため息をおつきになりながらご出発なさった。
たった一晩お会いになれなかっただけで、女君はますます魅力的になっているような気がなさる。
ご正妻のことなどどうでもよくなってしまわれて、しばらく六条の院でお暮らしになる。
昨夜のお着物は、灰だけでなく炭も一緒に浴びせかけられたせいで、焦げて穴が開いている。
下に重ねたお着物まで焦げくさくなってしまったから、すべて脱いでお体をお洗いになった。
それから他のお着物をお召しになるけれど、ご病気のご正妻にお着物の管理や製作のご指示は難しくて、ちょうどよいものがそろっていないの。
不格好になってしまったことに文句をおっしゃっている。
女房がお着物にお香を焚きしめながら申し上げる。
「見捨てられる奥様はお胸が焦げるほどお苦しみでございます。昨夜はその炎がお着物に飛び移ったのでしょうね」
この人は右大将様のお手がついているけれど、ご正妻に同情している。
<どうしてこの程度の女に手をつけたのだろう>
美しい玉葛の尚侍様を手に入れたあとでは、そんなふうにお思いになるのだから情けない方でいらっしゃる。
「後悔することはいくらでもあるが、いずれにせよ、こんなひどい話を源氏の君と式部卿の宮様がお聞きになったら、私はどちらからも締め出されてしまうだろうよ」
ため息をおつきになりながらご出発なさった。
たった一晩お会いになれなかっただけで、女君はますます魅力的になっているような気がなさる。
ご正妻のことなどどうでもよくなってしまわれて、しばらく六条の院でお暮らしになる。



