日が暮れると右大将様はそわそわなさる。
どうやって尚侍様のところに出かけようかと考えていらっしゃると、雪が降ってきた。
<こんな夜にわざわざ出かけるのも人目が気になる。いっそこの人が憎たらしく恨んでくれれば、私も腹を立てて堂々と出ていけるのに。こんなふうにおっとりと寂しそうにされては、心苦しくて出かけにくい>
どうしたものかと縁側から外を眺めていらっしゃる。
ご正妻は落ち着いておっしゃる。
「あいにくの雪ですね。道中は大変でございましょうが、さぁ、夜が更ける前に」
「いや、こんな雪では出かけられそうにありません」
とりあえずそうおっしゃって、すぐに言い訳をなさる。
「今だけ許してください。新婚だというのに訪問が途絶えがちになっては、源氏の君も内大臣様も失礼な婿だとお思いになりますから。お心を落ち着かせてもう少しご覧になっていてください。新しい人をこちらに連れてきてしまえば出かけることもなくなるのです。こんなふうに正気でいらっしゃるときは、他の女に目移りなどしません。あなたが誰よりも愛しい」
少しほほえんでからご正妻はお返事なさった。
「ここにいてくださっても、他の人のことをお考えになっているのではつろうございます。よそにいらっしゃっても私のことを思い出してくだされば心は慰められますから」
右大将様のお着物にお香を焚きしめるよう女房にお命じになる。
ご自分の外見を気になさる余裕はもうおありではないけれど、夫君の外出のご準備は健気にしておあげになるの。
泣きはらしたお目がお気の毒で、
<この人は悪くないのだ>
と右大将様はご覧になる。
この年になってからのご自分の浮気心を責める一方で、早く尚侍様に会いたいともお思いになる。
面倒がるふりをしながらお着替えをなさった。
立派に身支度なさったお姿は、源氏の君にはとてもかなわないけれど、力強くて並の貴族とは思えない。
どうやって尚侍様のところに出かけようかと考えていらっしゃると、雪が降ってきた。
<こんな夜にわざわざ出かけるのも人目が気になる。いっそこの人が憎たらしく恨んでくれれば、私も腹を立てて堂々と出ていけるのに。こんなふうにおっとりと寂しそうにされては、心苦しくて出かけにくい>
どうしたものかと縁側から外を眺めていらっしゃる。
ご正妻は落ち着いておっしゃる。
「あいにくの雪ですね。道中は大変でございましょうが、さぁ、夜が更ける前に」
「いや、こんな雪では出かけられそうにありません」
とりあえずそうおっしゃって、すぐに言い訳をなさる。
「今だけ許してください。新婚だというのに訪問が途絶えがちになっては、源氏の君も内大臣様も失礼な婿だとお思いになりますから。お心を落ち着かせてもう少しご覧になっていてください。新しい人をこちらに連れてきてしまえば出かけることもなくなるのです。こんなふうに正気でいらっしゃるときは、他の女に目移りなどしません。あなたが誰よりも愛しい」
少しほほえんでからご正妻はお返事なさった。
「ここにいてくださっても、他の人のことをお考えになっているのではつろうございます。よそにいらっしゃっても私のことを思い出してくだされば心は慰められますから」
右大将様のお着物にお香を焚きしめるよう女房にお命じになる。
ご自分の外見を気になさる余裕はもうおありではないけれど、夫君の外出のご準備は健気にしておあげになるの。
泣きはらしたお目がお気の毒で、
<この人は悪くないのだ>
と右大将様はご覧になる。
この年になってからのご自分の浮気心を責める一方で、早く尚侍様に会いたいともお思いになる。
面倒がるふりをしながらお着替えをなさった。
立派に身支度なさったお姿は、源氏の君にはとてもかなわないけれど、力強くて並の貴族とは思えない。



