内大臣様は近江の君のお望みを人づてにお聞きになって、華やかにお笑いになった。
女御様のお部屋へ行かれたときに、
「近江の君はいますか、こちらへいらっしゃい」
とお呼びになる。
威勢のよいお返事をして姫君が出ていらっしゃった。
「よく働いているようですね。これなら女官としても十分やっていけるだろう。尚侍になりたいのなら、どうして早く私に言わなかったのです」
「父君にご相談申し上げたかったのですが、女御様からお伝えいただけるだろうと期待していたのでございます。もう尚侍になる人は決まってしまったと聞きましたから、夢でお金持ちになっただけのような気がして、ため息が出ます」
姫君に似合わない、はきはきとした口調でお話しになる。
内大臣様は思わず笑いそうになるのをこらえておっしゃる。
「妙なところは奥ゆかしいのですね。私に伝えてくれていたら、誰よりも先に申し込んであげたのに。いくら源氏の君の姫君がご立派な方でも、私が帝に熱心にお願い申し上げれば、きっとお聞き届けくださったはずだ。
今からでも間に合うかもしれません。申込書を書いてごらんなさい。中国語の文章のように、漢字だけで立派に書くのですよ。古めかしい長い和歌も添えるとよいでしょう。帝は風流を好まれる方ですから」
父君とは思えないほど意地悪ね。
「和歌は下手ながらなんとか作れますが、申込書は父君にお書きいただきとう存じます。父君に私のことを立派に書いていただけたら心強うございます」
手を合わせてお願いなさるので、控えている女房たちは笑いをこらえるのが大変で死ぬかと思った。
こらえきれない人たちは、お部屋の外へ出て声を上げて笑う。
女御様もお顔を赤くなさって、内大臣様の悪ふざけをみっともないとお思いになっている。
「いやはや、気分の晴れないときはあなたに会うに限る」
内大臣様はそうお笑いになるけれど、世間は、
「恥ずかしさをそうやってごまかしておられるのだろう」
と見ている。
女御様のお部屋へ行かれたときに、
「近江の君はいますか、こちらへいらっしゃい」
とお呼びになる。
威勢のよいお返事をして姫君が出ていらっしゃった。
「よく働いているようですね。これなら女官としても十分やっていけるだろう。尚侍になりたいのなら、どうして早く私に言わなかったのです」
「父君にご相談申し上げたかったのですが、女御様からお伝えいただけるだろうと期待していたのでございます。もう尚侍になる人は決まってしまったと聞きましたから、夢でお金持ちになっただけのような気がして、ため息が出ます」
姫君に似合わない、はきはきとした口調でお話しになる。
内大臣様は思わず笑いそうになるのをこらえておっしゃる。
「妙なところは奥ゆかしいのですね。私に伝えてくれていたら、誰よりも先に申し込んであげたのに。いくら源氏の君の姫君がご立派な方でも、私が帝に熱心にお願い申し上げれば、きっとお聞き届けくださったはずだ。
今からでも間に合うかもしれません。申込書を書いてごらんなさい。中国語の文章のように、漢字だけで立派に書くのですよ。古めかしい長い和歌も添えるとよいでしょう。帝は風流を好まれる方ですから」
父君とは思えないほど意地悪ね。
「和歌は下手ながらなんとか作れますが、申込書は父君にお書きいただきとう存じます。父君に私のことを立派に書いていただけたら心強うございます」
手を合わせてお願いなさるので、控えている女房たちは笑いをこらえるのが大変で死ぬかと思った。
こらえきれない人たちは、お部屋の外へ出て声を上げて笑う。
女御様もお顔を赤くなさって、内大臣様の悪ふざけをみっともないとお思いになっている。
「いやはや、気分の晴れないときはあなたに会うに限る」
内大臣様はそうお笑いになるけれど、世間は、
「恥ずかしさをそうやってごまかしておられるのだろう」
と見ている。



