野いちご源氏物語 二九 行幸(みゆき)

中宮(ちゅうぐう)様からもお祝いが届いた。
裳着(もぎ)儀式(ぎしき)では、女の子が初めて「()」という飾りを着物につけるの。
その()を中宮様がくださったわ。
他にも、お着物やお(ぐし)を整えるお道具、舶来(はくらい)の上等なお(こう)もくださった。
六条(ろくじょう)(いん)女君(おんなぎみ)たちからもさまざまなお祝いが届く。

二条(にじょう)(ひがし)(いん)の女君たちは、儀式のことを人づてにお聞きになっても、遠慮してとくに何もなさらない。
それなのに常陸(ひたち)(みや)の姫君だけは、こういうときにきちんとしなければ気がすまない方でいらっしゃるから、また古めかしくて奇妙(きみょう)な着物などを贈っていらっしゃった。
お手紙は穏やかに、しかし堂々と書かれている。
「私のことなど姫君はご存じないでしょうから遠慮がされますが、お祝いを知らぬふりはできませんので、たいした物ではありませんが女房(にょうぼう)などにお与えください」