若君は大宮様のお屋敷にお泊まりになる。
激しい風の音を一晩中聞きながら、ぼんやりとなさっている。
まぶたに浮かぶのは雲居の雁ではいらっしゃらない。
紫の上のお美しいお顔なの。
<いや、いけない。父君の女君に恋をするなんてあってはならないことだ。恐ろしい>
しいて他のことを考えようとなさるけれど、そのたびに思い出してしまわれる。
<人生で二度と拝見できないような美しい方だった。父君にはあれほどの方がいらっしゃるのに、どうして養母君のこともそれほど劣らずお扱いになるのだろう。比べるまでもないような方なのに、おかわいそうな気さえする>
若君にはまだ、花散里の君の長所がお分かりにならないみたいね。
<父君はお優しい方だ>とお思いになっていた。
もちろん紫の上を手に入れたいだなんて大それたことはお考えにならない。
ただ、
<どうせならああいう美人を妻にして暮らしたいものだ。寿命もきっと延びるだろう>
と思っていらっしゃる。
激しい風の音を一晩中聞きながら、ぼんやりとなさっている。
まぶたに浮かぶのは雲居の雁ではいらっしゃらない。
紫の上のお美しいお顔なの。
<いや、いけない。父君の女君に恋をするなんてあってはならないことだ。恐ろしい>
しいて他のことを考えようとなさるけれど、そのたびに思い出してしまわれる。
<人生で二度と拝見できないような美しい方だった。父君にはあれほどの方がいらっしゃるのに、どうして養母君のこともそれほど劣らずお扱いになるのだろう。比べるまでもないような方なのに、おかわいそうな気さえする>
若君にはまだ、花散里の君の長所がお分かりにならないみたいね。
<父君はお優しい方だ>とお思いになっていた。
もちろん紫の上を手に入れたいだなんて大それたことはお考えにならない。
ただ、
<どうせならああいう美人を妻にして暮らしたいものだ。寿命もきっと延びるだろう>
と思っていらっしゃる。



