大宮様のお屋敷までの道中も、若君の乗り物に風が吹きつける。
若君は真面目な方だから、父君と、祖母君である大宮様に毎日ご挨拶を欠かさないの。
いつも六条の院の春の御殿で父君にご挨拶なさると、大宮様のお屋敷に寄ってから内裏に出勤なさる。
どれほどお仕事がお忙しくてもこの日課はお変えにならない。
こんな暴風の日でも同じことをなさるのだから、本当に義理堅い方でいらっしゃるわ。
若君がお戻りになって、大宮様はうれしく頼もしくお思いになった。
「この年になって、まだこのような恐ろしい台風に遭うとは」
ただただおびえて震えていらっしゃるの。
お庭の大木の枝が折れる音が聞こえる。
お屋敷の屋根瓦さえ飛んでしまいそうな風よ。
「こんな日にあなたがいてくださってよかった」
と若君にすがりつくようにしておっしゃる。
大宮様の亡き夫君は太政大臣にまでおなりになった方で、ご夫婦でたいへんな勢力がおありだった。
もちろん今も世間からは尊重されつづけていらっしゃるし、内大臣様というご立派なご子息もいらっしゃる。
でも、大宮様と内大臣様との仲は今ひとつのようで、この若君だけを頼りにしておられるの。
はかない世の中よね。
若君は真面目な方だから、父君と、祖母君である大宮様に毎日ご挨拶を欠かさないの。
いつも六条の院の春の御殿で父君にご挨拶なさると、大宮様のお屋敷に寄ってから内裏に出勤なさる。
どれほどお仕事がお忙しくてもこの日課はお変えにならない。
こんな暴風の日でも同じことをなさるのだから、本当に義理堅い方でいらっしゃるわ。
若君がお戻りになって、大宮様はうれしく頼もしくお思いになった。
「この年になって、まだこのような恐ろしい台風に遭うとは」
ただただおびえて震えていらっしゃるの。
お庭の大木の枝が折れる音が聞こえる。
お屋敷の屋根瓦さえ飛んでしまいそうな風よ。
「こんな日にあなたがいてくださってよかった」
と若君にすがりつくようにしておっしゃる。
大宮様の亡き夫君は太政大臣にまでおなりになった方で、ご夫婦でたいへんな勢力がおありだった。
もちろん今も世間からは尊重されつづけていらっしゃるし、内大臣様というご立派なご子息もいらっしゃる。
でも、大宮様と内大臣様との仲は今ひとつのようで、この若君だけを頼りにしておられるの。
はかない世の中よね。



