野いちご源氏物語 二四 胡蝶(こちょう)

一月に春の御殿(ごてん)での見物(けんぶつ)(まね)かれてから、玉葛(たまかずら)姫君(ひめぎみ)(むらさき)(うえ)と文通をなさっている。
この姫君は重厚(じゅうこう)なところはおありではないけれど、明るくて親しみやすいお人柄(ひとがら)なの。
やはりご苦労を乗り越えてこられた方は違うわ。
六条(ろくじょう)(いん)女君(おんなぎみ)たちとも上手に打ち解けて、かわいがられていらっしゃる。

求婚者はたくさんいる。
源氏(げんじ)(きみ)が父親として結婚相手をお決めになってもよいのだけれど、迷っておられるの。
<いっそ私の恋人にしてしまおうか。内大臣(ないだいじん)に知らせてからならばよいだろう>
とお思いになることもある。

若君(わかぎみ)はご姉弟(きょうだい)だと信じていらっしゃるから、姫君のお部屋の近くまで上がられる。
姫君は人づてでお話しなさりたいけれど、仕方なく直接お話しになる。
内大臣(ないだいじん)様のご子息(しそく)は、若君のご友人という立場で遊びにいらしては恋心を表される。
でもこの方は、実は姫君の弟君(おとうとぎみ)でいらっしゃるのよね。
姫君は心苦しくなってしまわれる。

<早く本当の父君(ちちぎみ)に私のことを知っていただきたい>
と悩んでいらっしゃるけれど、お世話してくださる源氏の君にそうはおっしゃらない。
ただひたすら頼っておられるご様子が、上品で少女らしい。
それほど夕顔(ゆうがお)(きみ)に似ていらっしゃるわけではないけれど、甘え上手なところは母親(ゆず)りで、しかも器用さもおありになるの。