野いちご源氏物語 二四 胡蝶(こちょう)

兵部卿(ひょうぶきょう)(みや)様は、長年ご一緒だった奥様が三年ほど前にお亡くなりになって、今は寂しいお暮らしをなさっている。
玉葛(たまかずら)姫君(ひめぎみ)をぜひ後妻(ごさい)になさりたいとお考えなの。
源氏(げんじ)(きみ)はそれをご存じで、
<おもしろいことになってきた>
と思いながらも気づかないふりをなさっている。

朝までつづいた宴会(えんかい)で、宮様はすっかり()って、回ってきた(さかずき)をお断りになる。
「もう帰らせていただこうとも思いますが、このお屋敷にどうしても気になる方がいらっしゃるのです。その方を手に入れるためでしたら何でもいたしましょう。その結果、この身を破滅(はめつ)させて人に笑われることになったとしてもかまいません」
ご自分にとって源氏の君は兄君(あにぎみ)だから、姫君への求婚者たちのなかで有利だろうと期待していらっしゃるみたい。

源氏の君は、
<この宮様なら求婚させがいがある>
と思ってお引き留めなさる。
「それほどの危険を(おか)す価値がある相手かどうか、よくお確かめください」
そうまで言われては、宮様はお帰りになれない。
楽しい(うたげ)はまだ続いていった。