野いちご源氏物語 二四 胡蝶(こちょう)

夜が明けた。
早朝の鳥のさえずりを、中宮(ちゅうぐう)様は秋の御殿(ごてん)でうらやましくお聞きになる。
(とうと)いご身分でいらっしゃるために、昨夜の(うたげ)をご覧になることができなかったのだもの。

源氏(げんじ)(きみ)のお屋敷は二条(にじょう)(いん)のころから貴族たちに評判だったけれど、唯一(ゆいいつ)足りないものは、「年ごろの若い姫君(ひめぎみ)」だった。
でも今は玉葛(たまかずら)の姫君がいらっしゃる。
源氏の君がわざとおおげさにお世話をなさるものだから、
<さぞかしすばらしい姫君でいらっしゃるのだろう>
と気になっている方が多い。

高いご身分の方は、自信をもってお手紙をお送りになる。
そんな振舞いができない若い貴族たちは、心のなかで恋の炎を燃やしている。
そのなかには内大臣(ないだいじん)様のご子息(しそく)も、姉とは知らずに心()かれていらっしゃった。