源氏の君は右近をお呼びになった。
右近は長年紫の上にお仕えしていたけれど、玉葛の姫君が六条の院に迎えられてからは、姫君にお仕えしているの。
「たくさんお手紙が来ているようだが、そなたが相手を厳選して、お返事をお書きになるよう申し上げなさい。今どきの好色な若者は平気で不届きなことをするが、それはすべて男のせいとも言えない。ちょっとした手紙に必要以上に反応して優しい返事をすれば、男はその気になってしまうものだから。
女性が訳知り顔に思ったことすべてを書くのは危険だ。いっそ返事をしない方が、男はより熱心に心をつかもうとしてくることだってある。もちろんそこで終わってしまうこともあるけれど、その場合は縁がなかったということだろう。
とはいえ、兵部卿の宮様と右大将はさすがに真剣なお気持ちだろうから、雰囲気を壊さないようなお返事をするべきだ。その他の相手は、どれほど真剣なのかきちんと見極めてからお返事するように」
玉葛の姫君は恥ずかしくて目をそらしていらっしゃる。
現代風の色合いのお着物がよくお似合いよ。
六条の院にお移りになる前は、やはり田舎びたところが少しおありだったけれど、こちらで女君たちと交流されるうちにすっかり都会的におなりになった。
もともとおっとりとしたご性格で、洗練されたお化粧などをなさると、申し分なく華やかでお美しい姫君なの。
<他の男と結婚させてしまうのは惜しい>
と源氏の君はお思いになる。
右近も、
<父親というにはお若すぎる。こうして並んでいらっしゃるとご夫婦のようだ>
とおふたりを拝見していた。
「お手紙はほとんどお断りしております。さすがに恐れ多いご身分の方からのお手紙は受け取らないわけにもいかず、それが先ほどご覧になったものなのです。そういう方たちのお手紙でも、姫君がお返事をお書きになるのは、源氏の君がお勧めになったときだけでございます。それさえ乗り気ではいらっしゃいません」
右近がそう言うと、源氏の君は水色の結び文をお手に取られる。
「ではこれは誰からなのだ。まだ若い男だろうが、よく書けている」
とほほえんでお尋ねになるの。
「それは内大臣様のご子息からでございます。こちらにご存じの女童がおりますようで、その子が受け取ってしまったのです。本来ならお断りすべき方でいらっしゃいますが」
右近は送り主が姫君の弟君だと知っているし、ご身分からしても受け取るべき相手ではないと思っている。
「かわいらしいな。たしかにまだ身分は低いが、あの人は見下してよい相手ではない。そこらの上級貴族には負けない才能も魅力もある人だ。将来出世しそうな若者たちのなかでもっとも落ち着きがある。こちらの姫君と姉弟だということは、いつか自然に知るときが来るだろう。それまではさりげないお返事でうまくごまかしておきなさい。それにしても見どころのある手紙だ」
内大臣様は、源氏の君の亡きご正妻の兄君でいらっしゃるから、ご子息は源氏の君の甥にあたられる。
幼いころからご存じの甥君が、立派な恋文を書くほどご成長なさったことを、源氏の君はほほえましくお思いなのでしょうね。
じっとご覧になっていたわ。
右近は長年紫の上にお仕えしていたけれど、玉葛の姫君が六条の院に迎えられてからは、姫君にお仕えしているの。
「たくさんお手紙が来ているようだが、そなたが相手を厳選して、お返事をお書きになるよう申し上げなさい。今どきの好色な若者は平気で不届きなことをするが、それはすべて男のせいとも言えない。ちょっとした手紙に必要以上に反応して優しい返事をすれば、男はその気になってしまうものだから。
女性が訳知り顔に思ったことすべてを書くのは危険だ。いっそ返事をしない方が、男はより熱心に心をつかもうとしてくることだってある。もちろんそこで終わってしまうこともあるけれど、その場合は縁がなかったということだろう。
とはいえ、兵部卿の宮様と右大将はさすがに真剣なお気持ちだろうから、雰囲気を壊さないようなお返事をするべきだ。その他の相手は、どれほど真剣なのかきちんと見極めてからお返事するように」
玉葛の姫君は恥ずかしくて目をそらしていらっしゃる。
現代風の色合いのお着物がよくお似合いよ。
六条の院にお移りになる前は、やはり田舎びたところが少しおありだったけれど、こちらで女君たちと交流されるうちにすっかり都会的におなりになった。
もともとおっとりとしたご性格で、洗練されたお化粧などをなさると、申し分なく華やかでお美しい姫君なの。
<他の男と結婚させてしまうのは惜しい>
と源氏の君はお思いになる。
右近も、
<父親というにはお若すぎる。こうして並んでいらっしゃるとご夫婦のようだ>
とおふたりを拝見していた。
「お手紙はほとんどお断りしております。さすがに恐れ多いご身分の方からのお手紙は受け取らないわけにもいかず、それが先ほどご覧になったものなのです。そういう方たちのお手紙でも、姫君がお返事をお書きになるのは、源氏の君がお勧めになったときだけでございます。それさえ乗り気ではいらっしゃいません」
右近がそう言うと、源氏の君は水色の結び文をお手に取られる。
「ではこれは誰からなのだ。まだ若い男だろうが、よく書けている」
とほほえんでお尋ねになるの。
「それは内大臣様のご子息からでございます。こちらにご存じの女童がおりますようで、その子が受け取ってしまったのです。本来ならお断りすべき方でいらっしゃいますが」
右近は送り主が姫君の弟君だと知っているし、ご身分からしても受け取るべき相手ではないと思っている。
「かわいらしいな。たしかにまだ身分は低いが、あの人は見下してよい相手ではない。そこらの上級貴族には負けない才能も魅力もある人だ。将来出世しそうな若者たちのなかでもっとも落ち着きがある。こちらの姫君と姉弟だということは、いつか自然に知るときが来るだろう。それまではさりげないお返事でうまくごまかしておきなさい。それにしても見どころのある手紙だ」
内大臣様は、源氏の君の亡きご正妻の兄君でいらっしゃるから、ご子息は源氏の君の甥にあたられる。
幼いころからご存じの甥君が、立派な恋文を書くほどご成長なさったことを、源氏の君はほほえましくお思いなのでしょうね。
じっとご覧になっていたわ。



