野いちご源氏物語 二三 初音(はつね)

この宴会(えんかい)は春の御殿(ごてん)で行われたので、他の御殿にお住まいの女君(おんなぎみ)たちは楽しそうな騒ぎだけが聞こえてきて残念に思われる。
でももっとおつらいのは二条(にじょう)(ひがし)(いん)にお住まいの女君たち。
六条(ろくじょう)(いん)とは距離があるから、源氏(げんじ)(きみ)もあまりお訪ねにならないの。
つまらなくご退屈(たいくつ)に思われるときも多いけれど、
<まぁ、山奥で出家(しゅっけ)して男女の面倒(めんどう)(ごと)から離れたのだと思っておこう>
(あきら)めていらっしゃる。

源氏の君を(うら)むことはなさらない。
それ以外は何不自由なく暮らせるように源氏の君がお世話なさっているのだもの。
空蝉(うつせみ)尼君(あまぎみ)はひたすら仏教(ぶっきょう)修行(しゅぎょう)に集中していらっしゃる。
常陸(ひたち)(みや)様の姫君(ひめぎみ)は、女性向けに書かれたご本を読んでお勉強していらっしゃる。
おふたりともお好きなことをして暮らしておられるわ。