野いちご源氏物語 二三 初音(はつね)

お世話なさっている女君(おんなぎみ)は他にもたくさんいらっしゃって、すべての方のところにお顔をお見せになる。
「なかなか来られなくても心のなかではいつも思っていますからね。ただ、この先どれだけ生きられるかは、自分ではどうしようもないから心配だけれど」
と優しくおっしゃるの。
どの女君のことも、身分に応じて大切にしていらっしゃる。

太政(だいじょう)大臣(だいじん)という貴族としては最高の(くらい)でいらっしゃるのだから、もっと傲慢(ごうまん)になさってもおかしくないのよ。
でも源氏(げんじ)(きみ)は、女君たちに威張(いば)ることも(おん)()せがましくなさることもない。
親身(しんみ)にお世話をなさるから、そのおかげで多くの方が安心して暮らしていらっしゃる。