乳母の夫は、九州での上司にも姫君の素性は話していない。
「実は頭中将様の姫君」なんて言ったら大騒ぎになってしまうから、
「私の孫なのですが、大切に世話をしてやらなければならない事情がございまして」
と言ってあった。
亡くなったあと、乳母たちは心細さを我慢して、都へ戻る準備をする。
でも、亡き夫は真面目すぎる役人だったようで、地元の一部の人から嫌われていたの。
移動途中で何をされるか分からないから、恐くて出発できない。
そうしている間にも、姫君は美しくご成長なさる。
母君以上のお美しさで、父君の高貴なお血筋のせいかしら、上品さもおありよ。
ご性格はおおらかで、暗すぎることもなく、理想的な姫君にお育ちになった。
それを噂で聞いた田舎者たちが、こぞって手紙を送ってくる。
<姫君のお相手が田舎者だなんて、とんでもないことだ>
と乳母たちは思って、まったく相手にしていない。
「顔立ちはそれなりですけれど、孫は体に不自由なところがあるのです。結婚はさせずに尼にして、私の生きている限りは面倒を見るつもりです」
と言いふらしている。
真に受けた男は、
「美人だと言うのに体が不自由とは。もったいない」
と残念そうに言うので、それはそれで腹が立つ。
「なんとかして都にお連れして、父君にお知らせ申しましょう。お小さいころはとてもかわいがっていらっしゃったのだから、まさか無視はなさらないはずです」
と言いながら、乳母たちは仏様や神様に念じている。
ところが、乳母の娘たちも息子たちも、こちらで恋人ができて結婚していく者もいる。
心のなかでは父親の遺言を忘れていないけれど、都のことは少しずつ遠くなっていった。
姫君はだんだん事情が分かるお年になって、世の中をつらいものとお思いだったわ。
二十歳くらいにおなりになると、すっかりお美しく整われた。
あいかわらず田舎者たちの求婚は続いている。
「実は頭中将様の姫君」なんて言ったら大騒ぎになってしまうから、
「私の孫なのですが、大切に世話をしてやらなければならない事情がございまして」
と言ってあった。
亡くなったあと、乳母たちは心細さを我慢して、都へ戻る準備をする。
でも、亡き夫は真面目すぎる役人だったようで、地元の一部の人から嫌われていたの。
移動途中で何をされるか分からないから、恐くて出発できない。
そうしている間にも、姫君は美しくご成長なさる。
母君以上のお美しさで、父君の高貴なお血筋のせいかしら、上品さもおありよ。
ご性格はおおらかで、暗すぎることもなく、理想的な姫君にお育ちになった。
それを噂で聞いた田舎者たちが、こぞって手紙を送ってくる。
<姫君のお相手が田舎者だなんて、とんでもないことだ>
と乳母たちは思って、まったく相手にしていない。
「顔立ちはそれなりですけれど、孫は体に不自由なところがあるのです。結婚はさせずに尼にして、私の生きている限りは面倒を見るつもりです」
と言いふらしている。
真に受けた男は、
「美人だと言うのに体が不自由とは。もったいない」
と残念そうに言うので、それはそれで腹が立つ。
「なんとかして都にお連れして、父君にお知らせ申しましょう。お小さいころはとてもかわいがっていらっしゃったのだから、まさか無視はなさらないはずです」
と言いながら、乳母たちは仏様や神様に念じている。
ところが、乳母の娘たちも息子たちも、こちらで恋人ができて結婚していく者もいる。
心のなかでは父親の遺言を忘れていないけれど、都のことは少しずつ遠くなっていった。
姫君はだんだん事情が分かるお年になって、世の中をつらいものとお思いだったわ。
二十歳くらいにおなりになると、すっかりお美しく整われた。
あいかわらず田舎者たちの求婚は続いている。



