「誰しもそれぞれよく使う言葉というのがあって、本などで新しい表現を学んでもなかなか変わらないものです。常陸の宮様のお書きになったご本も読ませていただいたことがありますよ。『こういう表現はよい、こんな表現はよくない』とびっしり書かれていました。頭が痛くなってすぐにお返ししてしまいましたが、このお手紙は父宮のご本を熟読なさっている姫君のものとは思えない」
源氏の君は皮肉をおっしゃる。
「まぁ、それでは書き写しもなさらなかったのですか。お手元用に書き写しておいてくだされば、明石の姫君のお勉強に使えましたのに。私も拝見して学ばせていただきとうございました」
「いやいや、姫のお勉強にふさわしいご本ではありませんよ。ああいう専門的な本は女性にはよくない。すぐにのめりこんでしまいますからね。女性というのは、何かひとつのことに詳しくなるのではなく、いろいろな芸事が少しずつできるのがよいのです。自分の好みや流行にむやみに心を動かさず、穏やかにおっとり振舞った方が品よく見えるでしょう」
と、ご自分の理想の女性像をお話しになる。
常陸の宮様の姫君からのお手紙は、このまま無視なさるおつもりらしいの。
紫の上は、
「『着物を返したい』とまでお書きになったのに、何もお返事がなくてはがっかりなさいましょう」
とお勧めになる。
なんだかんだ源氏の君は情け深い方だから、堅苦しいお返事ではなく、少しからかうようなお返事をお書きになった。
「分かりますよ。『返したい』とおっしゃったのは、『着物を裏返しにして寝ると夢で会いたい人に会える』というおまじないのことでしょう。そんなことをなさる健気なあなたを愛しく思っていますよ」
源氏の君は皮肉をおっしゃる。
「まぁ、それでは書き写しもなさらなかったのですか。お手元用に書き写しておいてくだされば、明石の姫君のお勉強に使えましたのに。私も拝見して学ばせていただきとうございました」
「いやいや、姫のお勉強にふさわしいご本ではありませんよ。ああいう専門的な本は女性にはよくない。すぐにのめりこんでしまいますからね。女性というのは、何かひとつのことに詳しくなるのではなく、いろいろな芸事が少しずつできるのがよいのです。自分の好みや流行にむやみに心を動かさず、穏やかにおっとり振舞った方が品よく見えるでしょう」
と、ご自分の理想の女性像をお話しになる。
常陸の宮様の姫君からのお手紙は、このまま無視なさるおつもりらしいの。
紫の上は、
「『着物を返したい』とまでお書きになったのに、何もお返事がなくてはがっかりなさいましょう」
とお勧めになる。
なんだかんだ源氏の君は情け深い方だから、堅苦しいお返事ではなく、少しからかうようなお返事をお書きになった。
「分かりますよ。『返したい』とおっしゃったのは、『着物を裏返しにして寝ると夢で会いたい人に会える』というおまじないのことでしょう。そんなことをなさる健気なあなたを愛しく思っていますよ」



