野いちご源氏物語 二二 玉葛(たまかずら)

女君(おんなぎみ)たちからのお返事や、お使者(ししゃ)へのご褒美(ほうび)はそれぞれ立派なものだった。
でもそのなかに、奇妙(きみょう)なものが混ざっていたの。
常陸(ひたち)(みや)様の姫君(ひめぎみ)は、今は二条(にじょう)(ひがし)(いん)に引き取られて住んでいらっしゃる。
六条(ろくじょう)(いん)の女君たちほどきちんとした物をお返しになる必要はない。
他の方たちよりも(ひか)()になさるくらいがちょうどよいはずなの。

ところがこの姫君は格式(かくしき)ばったお考えの方だから、お使者へのご褒美として、派手なのに貧相(ひんそう)で古ぼけたお着物をお与えになった。
お返事は、分厚くて野暮(やぼ)ったい紙の、古くなって黄ばんでいるようなものに書いてある。
香りだけはしっかりと()きしめてあった。
「こんなものをいただいてはかえってつらくなってしまいます。着てみましたらあなた様を(うら)む気持ちが()き上がってまいりました。あぁ、唐衣(からごろも)。いっそお返ししとうございます。私の涙で(そで)()れた着物を」

古めかしいご筆跡(ひっせき)で、お礼でもないことが書かれていたの。
源氏(げんじ)(きみ)が苦笑いしながらしげしげとご覧になっているので、(むらさき)(うえ)も気になってしまわれる。
<あの姫君はむやみやたらと古めかしく振舞われる。見苦しいからおやめになったらよいのに>
と思うと我慢できず、つい紫の上にお話しになる。

「ご立派なお手紙なのですよ。昔の人たちは、『唐衣』とか『袖が濡れる』のような表現をよく使いましたからね。私の文章だって古くさい方だけれど、この姫君は流行(はや)りの言葉は一切お使いにならない」
とお笑いになった。