野いちご源氏物語 二二 玉葛(たまかずら)

乳母(めのと)女房(にょうぼう)たちは、六条(ろくじょう)(いん)の華やかな御殿(ごてん)魅了(みりょう)されている。
九州での住まいも、できる限り(みやこ)(ふう)に整えたお屋敷だったけれど、六条の院と比べたらひどく田舎(いなか)びているように思われるの。
こちらは家具なども現代風で品がよいし、何よりお住まいになっている方々がすばらしい。
源氏(げんじ)(きみ)中将(ちゅうじょう)様はまばゆいほど優雅(ゆうが)でお美しいのよ。

姫君(ひめぎみ)を地方長官のご正妻(せいさい)に」と仏様にお祈りしていた下働きの女も、今では、
<地方長官などたいしたことはない>
と思っている。
まして大夫(たいふ)(げん)の鼻息の荒かったことを思い出すと、ぞっとしてしまう。

<私を連れて九州から逃げてくれた乳母の長男のおかげだ。今思えば、どれほど勇気のいることだっただろう>
と姫君はお思いになって、右近(うこん)も同意する。
源氏の君は玉葛(たまかずら)の姫君が安心してお暮らしになれるよう、事務仕事をする家来を任命なさった。
そのなかには乳母の長男も含まれていたわ。

この人は田舎びて精神的にも沈んでしまっていたけれど、急に気持ちが晴れやかになった。
ふつうなら入ることさえできなかったはずの六条の院に、近ごろは一日中出入りして、部下を従えて事務を取り仕切っている。
<光栄なことだ>とありがたく思っていた。
こんなふうに源氏の君は、細かいところまで気を配ってくださるの。