野いちご源氏物語 二二 玉葛(たまかずら)

田舎(いなか)くさくない洗練(せんれん)された姫君(ひめぎみ)のようだ>
とうれしくお思いになって、(むらさき)(うえ)にもご報告なさる。
「九州に長くいたと聞いたから、さぞ野暮(やぼ)ったいだろうと(あなど)っていたけれど、むしろこちらが恥ずかしくなるような気高(けだか)さでしたよ。こういう姫がいると世間に知らせて、兵部卿(ひょうぶきょう)(みや)様など女好きな男たちをこの屋敷に呼びたいものだ。
ああいう男たちがここに来ても()まし(がお)でいるのは、年ごろの姫がいないせいですからね。姫を大切にお世話して、澄まし顔が崩れるところを見てみよう」

「ふつうの父親はそんなことをお考えになりませんよ。(あお)るようなことをなさってはいけません」
と、常識的な紫の上はご注意なさる。
「本当はあなたでそれをやってみたかったのです。我慢できずに自分のものにしてしまったけれど」
からかってお笑いになるので、紫の上はお顔を赤くなさる。
いつまでもかわいらしい女君(おんなぎみ)でいらっしゃる。

源氏の君は(すずり)と紙を引き寄せて、
夕顔(ゆうがお)(きみ)への思いは昔のまま変わらないが、あの姫はどういう(えん)で私のところへ来ることになったのだろう」
とお書きになった。
<まるで(かずら)という蔓草(つるくさ)をつたって手元(てもと)に来た姫君だ>
と感じておられるの。
ですから、これからこの姫君を「玉葛(たまかずら)姫君(ひめぎみ)」とお呼びいたしましょう。