姫君は内心、
<これほどお優しいお手紙でなくてよいから、実の父君からお手紙をいただきたかった。どうしてまったく知らない方のお屋敷に移らなければならないのだ>
と思って、右近に遠回しにそうおっしゃる。
でも右近は、
「源氏の君がご親切におっしゃっているのでございますから、まずは仰せのとおりになされませ」
と申し上げるし、乳母や女房たちも口々に賛成する。
「とりあえず貴族社会の一員になられることが先でございます。そうすれば自然と内大臣様のお耳にも入って、父君だと名乗り出てくださいますでしょう。親子というのは切っても切れない縁でございますから」
「姫君は右近殿とも再会なさったではありませんか。神様や仏様にお願いすれば、それほど縁が深くないはずの女房でも再会できるのですもの、まして父君にはいつか必ずお会いになれます」
乳母は、
「とにかくお返事をお書きなされませ」
と言って、紙や硯を用意する。
<とても田舎くさい筆跡なのに>
と姫君は恥ずかしく思っていらっしゃるの。
舶来の上等な紙の、よい香りをしみこませたものにお書きになった。
「私のような者とどのようなご縁だと仰せなのでございましょう。立派なご縁があるとは思われない不幸な私でございますのに」
ご筆跡は儚げで弱々しいけれど、上品で悪くはないので、源氏の君は安心なさった。
<これほどお優しいお手紙でなくてよいから、実の父君からお手紙をいただきたかった。どうしてまったく知らない方のお屋敷に移らなければならないのだ>
と思って、右近に遠回しにそうおっしゃる。
でも右近は、
「源氏の君がご親切におっしゃっているのでございますから、まずは仰せのとおりになされませ」
と申し上げるし、乳母や女房たちも口々に賛成する。
「とりあえず貴族社会の一員になられることが先でございます。そうすれば自然と内大臣様のお耳にも入って、父君だと名乗り出てくださいますでしょう。親子というのは切っても切れない縁でございますから」
「姫君は右近殿とも再会なさったではありませんか。神様や仏様にお願いすれば、それほど縁が深くないはずの女房でも再会できるのですもの、まして父君にはいつか必ずお会いになれます」
乳母は、
「とにかくお返事をお書きなされませ」
と言って、紙や硯を用意する。
<とても田舎くさい筆跡なのに>
と姫君は恥ずかしく思っていらっしゃるの。
舶来の上等な紙の、よい香りをしみこませたものにお書きになった。
「私のような者とどのようなご縁だと仰せなのでございましょう。立派なご縁があるとは思われない不幸な私でございますのに」
ご筆跡は儚げで弱々しいけれど、上品で悪くはないので、源氏の君は安心なさった。



