一晩中お参りをして、二日目の朝になった。
右近は僧侶の部屋を借りて姫君たちをお呼びしたわ。
ここなら静かにゆっくり話ができそう。
姫君は長旅でやつれてしまったことを恥ずかしがっていらっしゃる。
右近はそんなご様子もお美しいと思いながら申し上げる。
「姫君は本当にお美しくご成長なさいましたね。私は思いがけずご立派なお屋敷でお仕えしておりますから、美しい女性はたくさん拝見しています。なかでも紫の上と明石の姫君は格別にお美しいのですけれど、こちらの姫君だって負けてはいらっしゃいません。
源氏の君は、幼いころからありとあらゆる女性をご覧になってきた方ですが、『亡き入道の宮様と明石の姫君が美人だ』とおっしゃいます。私などは、入道の宮様のような高貴な方にお目にかかることはできませんでしたし、明石の姫君はお美しくはありますがまだ幼くていらっしゃいますから、やはり最高の美人といえば紫の上です。
源氏の君も内心ではそうお思いでしょうが、恥ずかしくておっしゃれないのでしょうね。そんな紫の上に並ぶ美人などいらっしゃらないと思っておりましたが、なんとまぁ、姫君のすばらしいお美しさ。こういう方を美人と申し上げるのでございましょう」
右近は姫君をうれしそうに見つめる。
乳母もうれしくなって言う。
「そうですとも。このようにお美しい姫君を、あやうく田舎に埋もれさせてしまうところでした。あまりにもったいないことだと思って、住み慣れた家を捨て、息子や娘とも別れて都に戻ってきたのです。戻ってきたといっても、二十年も九州におりましたから、むしろ知らない土地ですよ。
ねぇ、右近、すぐにうまく取り計らっておくれ。ご立派なお屋敷勤めをしているなら、何かしら伝手があるでしょう。姫君のことが父君のお耳に届くように、そして娘と認めていただけるように、どうかうまく計らってください」
あまりにあけすけに自分の話をされて、姫君は恥ずかしくなってしまわれた。
お顔をお背けになる。
「私などはたいした身分ではありませんが、源氏の君のおそばで御用をすることもございます。『夕顔の君の姫君はどうしていらっしゃるでしょうか』とふと申し上げますと、『私も探したいと思っているのだ。手がかりがあればよいのだが』とおっしゃいます」
右近はあくまでも、まず源氏の君にお知らせしたいと思っているみたいなの。
でも乳母は違う。
「源氏の君はご立派な方ですが、高貴なご夫人がたくさんいらっしゃいましょう。それよりも実の父君にお知らせくださいませ」
と頼む。
右近は、源氏の君が今でも夕顔の君を忘れられずにいらっしゃることを話す。
「もうお気づきかもしれませんが、夕顔の君がお亡くなりになったとき、ご一緒にいらしたのは源氏の君なのです。そのことを死ぬまで忘れられない悲しい出来事だとお思いです。『夕顔の君の代わりに、忘れ形見の姫君をお世話したい。私は子どもが少なくて寂しいから、自分の娘を見つけたと世間には言えばよい』と昔から仰せでした。
私もなんとか乳母殿にはご連絡したいと思っておりましたが、何かと遠慮しておりますうちに、乳母殿の夫君が九州へ赴任されると聞きましてね。赴任前、夫君は源氏の君のお屋敷にご挨拶にいらっしゃったのですよ。そのときお声をかけようと思ったのですが、ついにできませんでした。
夫君だけが九州へ行かれて、乳母殿は姫君とお屋敷にお残りになるものとばかり思っておりました。皆様で九州へ引っ越しておられたのですね。あぁ、そのまま九州に埋もれてしまわれていたらと想像すると、恐ろしくもったいないことです」
こんな話をして、夕暮れ時になったわ。
右近は僧侶の部屋を借りて姫君たちをお呼びしたわ。
ここなら静かにゆっくり話ができそう。
姫君は長旅でやつれてしまったことを恥ずかしがっていらっしゃる。
右近はそんなご様子もお美しいと思いながら申し上げる。
「姫君は本当にお美しくご成長なさいましたね。私は思いがけずご立派なお屋敷でお仕えしておりますから、美しい女性はたくさん拝見しています。なかでも紫の上と明石の姫君は格別にお美しいのですけれど、こちらの姫君だって負けてはいらっしゃいません。
源氏の君は、幼いころからありとあらゆる女性をご覧になってきた方ですが、『亡き入道の宮様と明石の姫君が美人だ』とおっしゃいます。私などは、入道の宮様のような高貴な方にお目にかかることはできませんでしたし、明石の姫君はお美しくはありますがまだ幼くていらっしゃいますから、やはり最高の美人といえば紫の上です。
源氏の君も内心ではそうお思いでしょうが、恥ずかしくておっしゃれないのでしょうね。そんな紫の上に並ぶ美人などいらっしゃらないと思っておりましたが、なんとまぁ、姫君のすばらしいお美しさ。こういう方を美人と申し上げるのでございましょう」
右近は姫君をうれしそうに見つめる。
乳母もうれしくなって言う。
「そうですとも。このようにお美しい姫君を、あやうく田舎に埋もれさせてしまうところでした。あまりにもったいないことだと思って、住み慣れた家を捨て、息子や娘とも別れて都に戻ってきたのです。戻ってきたといっても、二十年も九州におりましたから、むしろ知らない土地ですよ。
ねぇ、右近、すぐにうまく取り計らっておくれ。ご立派なお屋敷勤めをしているなら、何かしら伝手があるでしょう。姫君のことが父君のお耳に届くように、そして娘と認めていただけるように、どうかうまく計らってください」
あまりにあけすけに自分の話をされて、姫君は恥ずかしくなってしまわれた。
お顔をお背けになる。
「私などはたいした身分ではありませんが、源氏の君のおそばで御用をすることもございます。『夕顔の君の姫君はどうしていらっしゃるでしょうか』とふと申し上げますと、『私も探したいと思っているのだ。手がかりがあればよいのだが』とおっしゃいます」
右近はあくまでも、まず源氏の君にお知らせしたいと思っているみたいなの。
でも乳母は違う。
「源氏の君はご立派な方ですが、高貴なご夫人がたくさんいらっしゃいましょう。それよりも実の父君にお知らせくださいませ」
と頼む。
右近は、源氏の君が今でも夕顔の君を忘れられずにいらっしゃることを話す。
「もうお気づきかもしれませんが、夕顔の君がお亡くなりになったとき、ご一緒にいらしたのは源氏の君なのです。そのことを死ぬまで忘れられない悲しい出来事だとお思いです。『夕顔の君の代わりに、忘れ形見の姫君をお世話したい。私は子どもが少なくて寂しいから、自分の娘を見つけたと世間には言えばよい』と昔から仰せでした。
私もなんとか乳母殿にはご連絡したいと思っておりましたが、何かと遠慮しておりますうちに、乳母殿の夫君が九州へ赴任されると聞きましてね。赴任前、夫君は源氏の君のお屋敷にご挨拶にいらっしゃったのですよ。そのときお声をかけようと思ったのですが、ついにできませんでした。
夫君だけが九州へ行かれて、乳母殿は姫君とお屋敷にお残りになるものとばかり思っておりました。皆様で九州へ引っ越しておられたのですね。あぁ、そのまま九州に埋もれてしまわれていたらと想像すると、恐ろしくもったいないことです」
こんな話をして、夕暮れ時になったわ。



