この新しくやってきた女性客というのは、実は右近だったの。
夕顔の君の急死後、源氏の君に引き取られ、今は紫の上のもとで働いているのだけれど、
<本来ならば夕顔の君や姫君にお仕えする身なのに>
と思い悩んでしまうときがある。
そんなときはよく初瀬寺にお参りにきているの。
歩きなれた道とはいえ、さすがに疲れて物に寄りかかっていると、ついたての向こうに男の姿がちらりと見えた。
あちらの主人に出すらしい食事のお盆を持って歩いていく。
「これを姫君に差し上げてください」
と、間仕切りの向こうに話しかける声が聞こえた。
<あちらは私よりも身分の高いお客のようだ>
と思いながら、右近はついたての向こうを覗いてみる。
どこかで見たことがある男なの。
姫君の乳母の長男、ということに右近はなかなか気づけない。
何しろ二十年ぶりよ。
若いころを知っているだけだから、すっかり疲れた中年になってしまっていては気づけなくても当然よね。
男が下働きの女を呼んだらしい。
近づいてくるその顔を見ると、以前、夕顔の君の家で一緒に働いていた女なの。
<では、もしかしたらあの男は>
と思い当たって、夢のような気がする。
<だとしたら、間仕切りの向こうにいらっしゃる姫君というのは、夕顔の君の姫君だろうか>
と気が焦る。
そこまで覗きこむわけにもいかないので、胸の高鳴りを押さえて声をかけてみた。
下働きの女が返事をしてくれることを期待したけれど、姫君のお食事の準備が忙しいのかしら、返事がない。
右近はじれったくなってしまう。
夕顔の君の急死後、源氏の君に引き取られ、今は紫の上のもとで働いているのだけれど、
<本来ならば夕顔の君や姫君にお仕えする身なのに>
と思い悩んでしまうときがある。
そんなときはよく初瀬寺にお参りにきているの。
歩きなれた道とはいえ、さすがに疲れて物に寄りかかっていると、ついたての向こうに男の姿がちらりと見えた。
あちらの主人に出すらしい食事のお盆を持って歩いていく。
「これを姫君に差し上げてください」
と、間仕切りの向こうに話しかける声が聞こえた。
<あちらは私よりも身分の高いお客のようだ>
と思いながら、右近はついたての向こうを覗いてみる。
どこかで見たことがある男なの。
姫君の乳母の長男、ということに右近はなかなか気づけない。
何しろ二十年ぶりよ。
若いころを知っているだけだから、すっかり疲れた中年になってしまっていては気づけなくても当然よね。
男が下働きの女を呼んだらしい。
近づいてくるその顔を見ると、以前、夕顔の君の家で一緒に働いていた女なの。
<では、もしかしたらあの男は>
と思い当たって、夢のような気がする。
<だとしたら、間仕切りの向こうにいらっしゃる姫君というのは、夕顔の君の姫君だろうか>
と気が焦る。
そこまで覗きこむわけにもいかないので、胸の高鳴りを押さえて声をかけてみた。
下働きの女が返事をしてくれることを期待したけれど、姫君のお食事の準備が忙しいのかしら、返事がない。
右近はじれったくなってしまう。



