夕顔の君のことを覚えているかしら。
源氏の君がまだ十代でいらっしゃったころの恋人よ。
当時の頭中将様、今の内大臣様の恋人だったのだけれど、わけあって姿を隠し、貧しい暮らしをしていらっしゃった。
そんなときに源氏の君と出会われたの。
でも、この女君の人生が幸せになっていくことはなかった。
源氏の君とお出かけになった先で急死してしまわれたのよ。
惟光がひそかに葬儀をすませたけれど、夕顔の君の家の女房たちは、女主人が誰と出かけたのかさえ分からない。
しかも夕顔の君がお生みになった頭中将様の姫君もいらっしゃるから、途方に暮れていたわ。
夕顔の君にお供して出かけて、目の前で主を失った右近という女房は、そのまま二条の院に引き取られた。
源氏の君の女房として働くことになったの。
もう二十年ほど昔のことだけれど、源氏の君は今も夕顔の君を忘れてはいらっしゃらない。
<生きていてくれたら世話をしつづけたのに>
と思っておられる。
右近はそれから十年近く源氏の君にお仕えして、源氏の君が須磨へ行かれるときに、他の女房たちと同じように紫の上にお仕えすることになった。
そのまま今も紫の上のもとで働いている。
<控えめで良い女房だ>
と紫の上からも信頼されているけれど、右近は内心で、亡くなった主と源氏の君の恋人たちを比べている。
<夕顔の君が生きておられたら、きっと明石の君以上に大切にされていらっしゃったはずだ。源氏の君はそれほどの恋人でなくとも、見捨てず大切になさる。この紫の上にお並びになることは難しいだろうけれど、六条の院に呼ばれる女君のなかには入っていらっしゃったはずだ>
と悲しんでいるの。
源氏の君がまだ十代でいらっしゃったころの恋人よ。
当時の頭中将様、今の内大臣様の恋人だったのだけれど、わけあって姿を隠し、貧しい暮らしをしていらっしゃった。
そんなときに源氏の君と出会われたの。
でも、この女君の人生が幸せになっていくことはなかった。
源氏の君とお出かけになった先で急死してしまわれたのよ。
惟光がひそかに葬儀をすませたけれど、夕顔の君の家の女房たちは、女主人が誰と出かけたのかさえ分からない。
しかも夕顔の君がお生みになった頭中将様の姫君もいらっしゃるから、途方に暮れていたわ。
夕顔の君にお供して出かけて、目の前で主を失った右近という女房は、そのまま二条の院に引き取られた。
源氏の君の女房として働くことになったの。
もう二十年ほど昔のことだけれど、源氏の君は今も夕顔の君を忘れてはいらっしゃらない。
<生きていてくれたら世話をしつづけたのに>
と思っておられる。
右近はそれから十年近く源氏の君にお仕えして、源氏の君が須磨へ行かれるときに、他の女房たちと同じように紫の上にお仕えすることになった。
そのまま今も紫の上のもとで働いている。
<控えめで良い女房だ>
と紫の上からも信頼されているけれど、右近は内心で、亡くなった主と源氏の君の恋人たちを比べている。
<夕顔の君が生きておられたら、きっと明石の君以上に大切にされていらっしゃったはずだ。源氏の君はそれほどの恋人でなくとも、見捨てず大切になさる。この紫の上にお並びになることは難しいだろうけれど、六条の院に呼ばれる女君のなかには入っていらっしゃったはずだ>
と悲しんでいるの。



