野いちご源氏物語 二一 乙女(おとめ)

試験は大学(だいがく)(りょう)の建物で行われる。
若君(わかぎみ)はたくさんの貴族たちにお(とも)されていらっしゃった。
ふつうは若君ほどの家柄(いえがら)のお子がいらっしゃるところではないから、若君はつらくお思いになる。
学生が何か失敗をすると、学者たちは厳しく(しか)りつける。
それでも若君は堂々と受験して、見事合格なさったわ。
しばらくして、さらに難しい試験にも合格なさったから、若君はますます学問の奥深いところまで進んでいかれる。

源氏(げんじ)(きみ)が若君を大学寮に入学させなさったことは世間を驚かせた。
でもそれ以降、我が子を大学寮に入れる貴族が増えたの。
<ご立派なお考えだ>
と思ってまねをする親もいれば、
<これからは学問のできる貴族が出世する流れになるだろう>
と計算した親もいたでしょうね。
昔のように大学寮が人気になって、高い家柄のお子も学問をなさるようになった。
そうして内裏(だいり)学才(がくさい)のある人が増えていったの。

源氏の君も頻繁(ひんぱん)に中国の詩を作る会を開かれた。
博士や学才のある貴族たちが才能を発揮する。
どのような分野でも、才能ある人が埋もれてしまわずに活躍できる時代になったわ。