四つのお屋敷は、渡り廊下でつながっている。
中宮様と紫の上と花散里の君は、それぞれ穏やかな交流をしていらっしゃる。
女童などが、お手紙のやりとりのためによく行き来しているわ。
季節は秋だから、紅葉が色づいて、中宮様のお庭は言葉では言い表せないほどの美しさ。
少し強い風が吹いている夕暮れ時、中宮様は紫の上に花や紅葉をお届けになった。
美しい箱の蓋をお盆がわりにして、いろとりどりに載せてあるの。
落ち着いた色合いの着物を着た女童が、慣れた様子で渡り廊下を歩いていく。
普段は内裏で中宮様にお仕えしている子だから、振舞いがさすがに立派だったわ。
中宮様からのお手紙には、
「そちらは春を待っていらっしゃることでしょう。こちらの秋の美しさをお裾分けいたします」
とある。
紫の上のお屋敷の方は、主に春の植物が植えられていることをご存じで、からかっていらっしゃるのね。
紫の上はお返事で、
「紅葉は風に散ってしまいますが、春はこんなふうにどっしりと根を張っておりますよ」
と言い返される。
中宮様から届いたお盆に苔を敷いてから、岩に見立てた石や作り物の松を置いてお届けになった。
<見事なお返しをお作りになったものだ>
と源氏の君は感心なさる。
女房たちも周りに集まって楽しそうに拝見しているの。
源氏の君は、
「中宮様は得意気でいらっしゃいますが、春になったらこちらの本気をお見せいたしましょう。紅葉をあまり悪く言っては秋の神様がお怒りになりますからね。桜さえ咲けばこちらも強気な態度に出られます」
と若々しく勝負なさるおつもりでいらっしゃる。
こんなふうに、風流で優雅なお付き合いをなさっている。
中宮様と紫の上と花散里の君は、それぞれ穏やかな交流をしていらっしゃる。
女童などが、お手紙のやりとりのためによく行き来しているわ。
季節は秋だから、紅葉が色づいて、中宮様のお庭は言葉では言い表せないほどの美しさ。
少し強い風が吹いている夕暮れ時、中宮様は紫の上に花や紅葉をお届けになった。
美しい箱の蓋をお盆がわりにして、いろとりどりに載せてあるの。
落ち着いた色合いの着物を着た女童が、慣れた様子で渡り廊下を歩いていく。
普段は内裏で中宮様にお仕えしている子だから、振舞いがさすがに立派だったわ。
中宮様からのお手紙には、
「そちらは春を待っていらっしゃることでしょう。こちらの秋の美しさをお裾分けいたします」
とある。
紫の上のお屋敷の方は、主に春の植物が植えられていることをご存じで、からかっていらっしゃるのね。
紫の上はお返事で、
「紅葉は風に散ってしまいますが、春はこんなふうにどっしりと根を張っておりますよ」
と言い返される。
中宮様から届いたお盆に苔を敷いてから、岩に見立てた石や作り物の松を置いてお届けになった。
<見事なお返しをお作りになったものだ>
と源氏の君は感心なさる。
女房たちも周りに集まって楽しそうに拝見しているの。
源氏の君は、
「中宮様は得意気でいらっしゃいますが、春になったらこちらの本気をお見せいたしましょう。紅葉をあまり悪く言っては秋の神様がお怒りになりますからね。桜さえ咲けばこちらも強気な態度に出られます」
と若々しく勝負なさるおつもりでいらっしゃる。
こんなふうに、風流で優雅なお付き合いをなさっている。



