野いちご源氏物語 二一 乙女(おとめ)

上皇(じょうこう)様のお住まいで行われた試験で、若君(わかぎみ)は見事に合格なさった。
優秀な学生が十人集められて、合格したのは三人だけだったそうよ。
秋の人事(じんじ)異動(いどう)でついに五位(ごい)に上がられて、「侍従(じじゅう)」というお役職に任命されなさった。

雲居(くもい)(かり)のことはずっと思いつづけていらっしゃるけれど、五位になったからといって、すぐにお会いにもなれない。
内大臣(ないだいじん)様が隠すように大切にお世話なさっているのだもの。
文通だけはなさっている。
若君も姫君(ひめぎみ)も中途半端なご関係がお苦しい。