舞姫には弟がいて、若君にお仕えしている。
若君はいつも以上に近づいて、
「そなたの姉は、いつ内裏勤めを始めるのだ」
とお尋ねになった。
「年内にはと聞いております」
とお答えする。
「美しい人だった。恋しくて忘れられない。そなたはいつもお会いできてうらやましいな。私にも会わせてくれないか」
「そのようなことはできません。父が厳しくて、私たち兄弟でさえ姉に近づくことを許しませんから、若君をお近づけするなどとんでもないことでございます」
と申し上げる。
若君は、
「それならば手紙だけでも」
とおっしゃってお預けになった。
<手紙を届けることも禁止されているのに困った>
と弟は思ったけれど、若君があまりに熱心におっしゃるのでお断りできなかった。
舞姫は年のわりには大人びていて、お手紙をむやみやたらに恥ずかしがったりはしない。
「あなたの舞を見ていた私の気持ちに気づきましたか」
と、緑色の薄い紙に、少したどたどしさは残っているけれど、将来が楽しみになるようなご筆跡で書かれているの。
若君はいつも以上に近づいて、
「そなたの姉は、いつ内裏勤めを始めるのだ」
とお尋ねになった。
「年内にはと聞いております」
とお答えする。
「美しい人だった。恋しくて忘れられない。そなたはいつもお会いできてうらやましいな。私にも会わせてくれないか」
「そのようなことはできません。父が厳しくて、私たち兄弟でさえ姉に近づくことを許しませんから、若君をお近づけするなどとんでもないことでございます」
と申し上げる。
若君は、
「それならば手紙だけでも」
とおっしゃってお預けになった。
<手紙を届けることも禁止されているのに困った>
と弟は思ったけれど、若君があまりに熱心におっしゃるのでお断りできなかった。
舞姫は年のわりには大人びていて、お手紙をむやみやたらに恥ずかしがったりはしない。
「あなたの舞を見ていた私の気持ちに気づきましたか」
と、緑色の薄い紙に、少したどたどしさは残っているけれど、将来が楽しみになるようなご筆跡で書かれているの。



