野いちご源氏物語 二一 乙女(おとめ)

今年の舞姫(まいひめ)たちは、行事が終わったら内裏(だいり)で働くことが決まっている。
惟光(これみつ)源氏(げんじ)(きみ)にお願いをした。
「内裏で典侍(ないしのすけ)のお役目をする人が足りないと聞きました。ぜひ私の娘を典侍にご推薦くださいませ」
典侍は上級女官(にょかん)で、(みかど)のおそばで働くこともある。
家柄(いえがら)だけでなく、人柄(ひとがら)や教養もしっかりしていなければならない。
源氏の君は<推薦してやろう>と思っていらっしゃるみたい。
それだけ惟光の娘を優れた少女だと認めておられるのね。

若君(わかぎみ)はその話をお聞きになって、残念にお思いになる。
<内裏の女官になってしまうのか。六位(ろくい)の私には会うことすら難しくなる。私がもう少し大人で、位階(いかい)四位(しい)五位(ごい)だったら、結婚したいと言い出せただろうに。好意(こうい)も伝えられずにこの恋は終わってしまうのか>
と涙ぐまれる。