若君はお胸がふさがってしまって、食欲も出ず、学問をなさるご気分にもなれずにいらっしゃった。
気分転換にお屋敷の中を歩いて、二条の院の方まで行ってごらんになる。
お姿はご立派で美しく、上品に落ち着いていらっしゃるので、若い女房たちはうっとりと拝見している。
紫の上のお暮らしになっている離れは、普段は近づくこともできない雰囲気なの。
でも今日は、舞姫に選ばれた惟光の娘がやって来るらしい。
誰もが慌ただしくしているから、若君はこっそりお入りになることができた。
乗り物から丁寧に降ろされた舞姫は、ついたての向こうで休憩している。
若君がそっとお覗きになると、疲れたらしく物に寄りかかっていたわ。
<雲居の雁と同い年くらいだろうか。もう少し背が高いような感じがする。美しい人だ>
と見とれてしまわれる。
いきなり心変わりなさったわけではないけれど、思わず着物の裾を引いてごらんになった。
舞姫は、<何かしら>と不思議に思っている。
まさか源氏の君の若君が近くにいらっしゃるなんて思わないものね。
「あなたは私のものですよ。ずっと昔からあなたを思っていたのです」
ずいぶん唐突な口説き方をなさった。
若くて美しいお声だけれど、どなたなのか舞姫にはさっぱり分からない。
気味悪く思っていると、化粧直しをするために女房たちが近づいてきた。
辺りが騒がしくなったので、若君は残念に思いながらお離れになったわ。
気分転換にお屋敷の中を歩いて、二条の院の方まで行ってごらんになる。
お姿はご立派で美しく、上品に落ち着いていらっしゃるので、若い女房たちはうっとりと拝見している。
紫の上のお暮らしになっている離れは、普段は近づくこともできない雰囲気なの。
でも今日は、舞姫に選ばれた惟光の娘がやって来るらしい。
誰もが慌ただしくしているから、若君はこっそりお入りになることができた。
乗り物から丁寧に降ろされた舞姫は、ついたての向こうで休憩している。
若君がそっとお覗きになると、疲れたらしく物に寄りかかっていたわ。
<雲居の雁と同い年くらいだろうか。もう少し背が高いような感じがする。美しい人だ>
と見とれてしまわれる。
いきなり心変わりなさったわけではないけれど、思わず着物の裾を引いてごらんになった。
舞姫は、<何かしら>と不思議に思っている。
まさか源氏の君の若君が近くにいらっしゃるなんて思わないものね。
「あなたは私のものですよ。ずっと昔からあなたを思っていたのです」
ずいぶん唐突な口説き方をなさった。
若くて美しいお声だけれど、どなたなのか舞姫にはさっぱり分からない。
気味悪く思っていると、化粧直しをするために女房たちが近づいてきた。
辺りが騒がしくなったので、若君は残念に思いながらお離れになったわ。



